鎧甲冑
日本の甲冑・鎧の独創性
甲冑、鎧、具足といろいろな名称があるが日本の武士が戦闘の際に防御に着用したものだ。日本の高温、高湿の厳しい気候のなかで様々な工夫がなされた実用的な武具のひとつだ。その歴史は古代より古い。だが鉄砲伝来した16世紀半ばから必要に迫られて変化した。笠間 良彦氏は甲冑研究にあたり、幾つかの指針を述べておられた。それらのポイントは、
1、時代の特徴 2、会わせ物かどうか 3、うぶな姿の尊重 4、いわくに乗らず 5、高級品をみる 6、甲冑と対決する 7、古いから良いとは限らず、などである。5と6は同じ概念であろう。高級品を鑑賞し、それから得る何か観念的な何かが知識の源になるのではないか。
甲冑・具足は武士が戦場においての死ぬときの晴れ着だ。武士の生活は質素であってもその思想や文化を理解した工芸師が精神を込めて製作した作品である。
武器や戦闘方式の変遷により近代までの工芸の歴史、鉄の鍛えや工作、皮革、布、漆、などの材料や加工・工作の進歩を理解するうえで甲冑は重用な遺物である。そして何よりも武士の粋、趣味、人格を表した意匠(デザイン)が一番重要な要素であると考える。まずは本物のある程度高級品から入りたい。そして時代や武士の身分により生まれた様々な様式を研究したい。日本の甲冑は刀剣とならび武器兵器ではあるが、また総合的な芸術品であり、日本人が理解し、誇る品であると考えるからだ。日本はかって「武家国家」であったはずだ。
日本の甲冑・鎧兜は世界的に人気がある。多くの世界の有名博物館には収集物が多量にある。しかし、日本の現在の住宅事情を考えると展示はなかなか難しい。スペースがない。気候が悪く痛む。特に気温が上下する時が問題だ。温まったところに冷たい空気が触れると露結する。埃で汚れているとさらに問題は大きい。それに光による退色だ。古くから正倉院、神社などに奉納され保存されたものは上記の問題を考えに考えて保存してきた。演武に使うだけなら新物(あらもの)で十分だ。一般の人々に古いものか、新しいものかの判定はほとんど付かない。新物でも骨董品より高価であり、寸法、重量、着やすさなどの条件において優れており、骨董品を痛めることはない。これを「近代具足」と呼んでもおかしくないほど古いものをそのままに作ってある。しかし材料は軽いものだし、鎖部分などは大雑把な作りだ。旅館や料亭の玄関を飾ってあるのはこの手のものだ。
日本の甲冑には時代的に大別し2種類ある。中世までの大鎧、胴丸、腹巻、腹当などを総称するもの「古典具足」と、鉄砲出現後、形式の名前をとった室町時代末期、戦国時代から江戸時代の「当世具足」である。日本の場合、西欧列強と直接対戦した1863年文久3年頃から古い日本的な武器兵器と一緒に甲冑は使用されなくなった。(「近代具足」「古典具足」は筆者の命名であり学術的な言語ではない。)
項目:
1,鉄錆地当世具足例 本体
2,鉄錆地当世具足例 付属品小物類
鎖帷子(近日掲載)
お貸具足(近日掲載)
鉄砲足軽具足(近日掲載)
足軽陣傘各種(近日掲載)