火縄銃



 3 、火縄銃の種類と寸法

日本の火縄銃は使用されていた約320年間、戦国時代以降は武器としての機能は形骸化されたと言っても過言ではなく、流派、地方、寸法、口径、其の他使用目的などによりおびただしい種類のものが存在する。工業的にはほとんどが手作りであり、その規格や寸法も様々で多くは部品の互換性がない。

火縄銃の種類

薩摩筒

薩摩筒

薩摩筒

伝来した際の形状を良く踏襲してものと言われる。全長が116cm,口径六匁(1・6mm弱)が薩摩標準で良く見られる。カラクリが巻きバネを使用し小型である。火挟みが極端に小型である。木部の質が良くないものが多く見られる。

 

肥前の鉄砲

肥前の鉄砲

銃身が太く、銃床に浅く入っているところに特徴がある。木部は赤い漆に塗られていた。鉄質は良く、重い銃が多い。

備前筒

備前筒

備前筒

鉄製の外バネカラクリを持ち、丸い銃身のものが多い。用心鉄がない。標準サイズのものが多いが、用心鉄がないの とやや先細りの黒く着色された銃床に特徴がある。 鉄の外バネを強くし雷粒を使用するものに改造されたものも良く見る。

土佐筒

土佐筒

土佐筒

カラクリを横からでなく縦の軸で抑えているところに特徴がある。国友の銘が多い。

長州の鉄砲

長州の鉄砲

長州の鉄砲

銃身の先が銃床より飛び出しているのが特徴である。

阿波筒

阿波筒

阿波筒

一般に銃身が長く、全長140cm近く、口径は一匁五分(10mm)が標準的な銃で台に縞を入れ赤めに仕上げてあり太 い八角銃身が特徴である。重い銃が多いが鉄質は良くない。

紀州鉄砲

紀州鉄砲

紀州鉄砲

全体に細めでカラクリの形状に角を使っているのが特徴である。銃床の上角を落としてある。その昔傭兵が一人で 2挺の銃を運搬したなごりではないかと推定する。優雅な銃である。

堺筒

堺筒

堺筒

現存する火縄銃の約4分の1が堺系統である。機能よりも装飾を重んじたとも言われるが様々な形状、品質のものが存在する。

国友鉄砲

国友鉄砲

国友鉄砲

堺と並び国友住の銘のものは多い。あらゆる種類の銃が見られるが、銃床尾が平らになっている二重ゼンマイカラクリのものが多く見られる。木の木目を奇麗に出したものが多い。

日野筒

日野筒

日野筒

国友の特徴を備えたものが多いが独自の特徴を捉えるのは難しい。日野の鉄砲を低品質のものとする俗説があるが、現存するものからはそれは証明できないだろう。

上浦の関流

上浦の関流

上浦の関流

特徴を捉えるのは難しいが、頑丈で重い銃が多い。無骨な感じの銃が多いようだ。

東北の番筒

東北の番筒

東北の番筒

東北では標準的な銃をやや短め、そして大きな口径で作ってあったようだ。全長は110―120cmくらいで口径は四匁五分から五匁くらい、簡単で飾りのないものが多く、通しの番号が入れられているものが多い。それを番筒と呼ぶことがある。

米沢鉄砲

米沢鉄砲

米沢鉄砲

有名な米沢の鉄砲は十匁筒が多く、特徴的である。金属の輪とネジで銃身を木部に固定してある。大きな鉄製用心鉄、下方に曲った銃床などが特徴的である。土浦の鉄砲と同じ系列であることが外観から推定される。

仙台筒

仙台筒

仙台筒

地味であるが東北の銃に共通な形状をもっている。銃身が二つの目釘で銃床に固定されており、照星が谷型、引き金 は透かし型、外記カラクリなど地味だが複雑な機構も備えている。短筒から十匁まで様々な大きさの銃が見られるが共通の特徴がある。

火縄銃の寸法

短筒

短筒

短筒

片手で発射出来る銃であり、様々な形状、寸法の銃が存在する。短筒は銃把が短く真っ直ぐなものが多く、非常に扱い難い銃器のひとつと言える。筆者はこの真っ直ぐな握りは昔の人間の手首(剣道などの修練で)の強さのためではないかと推定する。

馬上筒

馬上筒

馬上筒

短筒よりやや長く馬上で装填出来る寸法と言うことであろうが、短筒も馬上筒と言うことがある。標準的な長さの銃に比較すると命中率は落ちる。距離としては十間(20m弱)のところから発射したものであろうと推定される。

標準的な長さの鉄砲

標準的な長さの鉄砲

標準的な長さの鉄砲

全長130cm、銃身長100cm強、口径は二匁から二匁半くらいの銃が一般的であり、徒歩の鉄砲隊で使用 されていたのであろう。外カラクリで用心鉄のあるものが多い。堺、国友を始め一部を除き全国的に生産使用されていたよ うだ。重量は口径により異なるが4kgから5kgくらいある。この種の銃なら有効射程距離100mは有にある。

狭間筒

狭間筒

狭間筒

城の狭間、船舶などに固定して射撃されたもので全長が150cm以上ある。口径は大きく重量も重い。10kgくらいある。2-300mの距離を照準したものと思われる。

大狭間筒

大狭間筒

大狭間筒

とてつもなく長く大きなモノも存在していたようだが現存しているのは少ない。

五匁馬上筒

五匁馬上筒

五匁馬上筒

馬上筒にはこの寸法が多く、約4割近くが五匁(口径14・8mm)くらいである。全長は60cm弱、銃身長36cmくら いのものであるが、その形状は様々で2挺以上同じものを見ることはまれである。

十匁筒

十匁筒

十匁筒

口径18mmから19mmくらいの銃を十匁、侍筒、下士でなく士分が装備したものと言う。比較的現存する数量は多い。重厚で出来の良い銃がほとんどである。

三十匁筒

三十匁筒

三十匁筒

口径は27・5mm、短い銃身(62・3cm)ながら重量は11・5kgある。九州黒田藩陽流の形式の銃と言われている。 これ以上の口径の銃は少ない。

五十匁筒

五十匁筒

五十匁筒

この口径は外国では大砲である。一発を発射するに黒色火薬40gくらいを要する。建築物や船舶の破壊に使用されたものであろう。但し日本の火縄銃は榴弾を使用してという記録は見ていない。