4 、矢収容器類

矢は当時の他の武器とは異なり、慎重に管理された。命中率を高めるには矢そのものが完全でなければならず、曲がったり、鏃がゆるんだり、また矢羽根が狂うと効果が発揮できないからだ。そのために戦闘用にも、狩猟用にも、稽古用にも矢を収納する容器は実用性と更に格を表す豪華性、芸術性などを重んじ、また儀礼をも加味し、作られた。
特に参勤交代などで使われた品々の豪華性は測り知ることのできない労力が使われていた。

1、的矢を入れる筒

粗末な竹を削ったもの、蓋が欠落、底は木製

2、 的矢を入れた筒、江戸期

全長90㎝、紙を張り合わせ漆仕上げしたもので防水には問題ない。

「大と○二の合印が入れられている。

3、現在の矢筒

現在も的矢4本を収納するもの、長門という紙紐を漆で固める方式で製造されている。手作りだ。
会社の弓道部で使用していたものでおよそ50年前のもの。蓋などは凝っている。全長97㎝

4、細い蝦(えびら)征矢4本収納

運搬用と固定用がある。運搬用の小型。しっかりとした収納で雨風にも強い。革具で身体に固定してようだが、その方法が不明。全長98㎝、上直径8㎝、花入れに使われていた。

 

5、中太の蝦 征矢6本収納

在銘で「御うつか師 竹内広篤 広重」とある。

底の構造が不明で、この木製の筋は鏃を保護するためのものだろうが、隙間には鏃の先は入らない。全長96㎝、上直径12㎝

6、空穂(うつぼ)

大型征矢10本以上を収容する 「具足着用の次第」より

全体を熊か猪の毛皮で被い、矢が濡れるのを嫌ったようだ。

7、矢入れ

4分3弓用の矢入れで矢を11本収容し弓と弦の間に挟む。猟用であろう。
使用する時、矢入れは腰に差し、右手で1本ずつ抜いた方式だ。

全長54㎝、皮袋の幅12㎝と小型で70㎝の矢が10本と平根矢が皮袋の外に1本入る。
(矢羽根は再製作)会津地方のもの。

8、塗蝦(ぬりえびら)

中島源尹信 幅14㎝、奥行12㎝、高さ10㎝、内部には30本の細い木の受けがある。
この受けには鏃は入らないが先を痛めることなく置いておくことができる。長い太い絹紐で腰に回して身体の右後ろに来るように固定したそうである。優雅で美術品の類だ。

箱蝦は種類が多いがなかなか見ることはない。時代的には古い形式と考えられる

9、竹製矢入れ赤 具足着用次第より

 

10本の征矢を保持する台だが、この台自体は弓のなかにはいる。鏃は右の革袋で保護される。このまま腰差しもできる。竹製で軽い。全長66㎝、上幅17㎝、厚さ3㎝
矢の固定は紐か帯を回したものであろう。この矢入れも弓に弦を張った場合、その間にいれるようになって運搬し、使用の際は腰にさした。

皮袋にある弓を保持する金具

9、竹製矢入れ黒

革袋が大きいが収納する鏃のためだろう。皮袋は2重になっているが状態は良くない。

 

10、弓矢台

持ち運びに使用し、2張の弓と11本矢入れ2個が一つの台に載せられ一人の下士が運搬する。全長80㎝、上部枠幅9㎝ 矢羽根再製作

数は見られるが大体同じ形式でありこれに弓を載せたら大変保持し難い方式ではあるが。
上は「蜂須賀家」のもので、同じものが蜂須賀家にある。下、その他同じ形式の弓矢台

下矢羽根再製作

蜂須賀家の弓矢台の各所

弓矢台の各所。

11、箱入り弓矢台

豪華なものである。木箱の皮革を張り、押し型で蝶の家紋、模様を入れた高級品。箱に弓2張を一緒に入れ運搬した。

全長90㎝、上幅21㎝、厚さ10㎝

12、矢屏風

折りたたむ屏風形式であり、11本の矢が4枚、44本収納される。装飾家具としてまた
実用として使うもの。折りたたんだ状態(下)高さ90㎝、幅37㎝、折りたたみ状態11㎝

インテリアとしても優れたデザインだ。

13、矢箱

野戦の兵站に使用した矢を運ぶ箱

箱の実物は各地のお城の展示などで見られることがある。(例大阪城)