8 、弓矢の補修

近年のものはともかく、江戸期のものは、弓は籐の巻きが、矢は矢羽根が痛んでいる。

(まん中の札に銘がある)

弓の籐の巻きが欠落したものは、その跡がきちんと残っていれば、そこに新たに巻き補修することが出来る。この弓は京都住18代目柴田 勘十郎作(長谷川氏読み)、江戸後期のもので厚さ22㎜とかなり強い弓だ。竹の節を挟む形で巻いてあったものが10箇所、先端1箇所の欠落があった。それらを補修したものだ。現在の籐は白いので残っている元の巻きに近い色付けが重要であり、この弓の場合は新たに巻いた部分はほとんど分からない。展示用にしておくには巻きが完全でないと弓の価値が分からない。元の弓には漆が掛けてあったが脂(やに)で色が出てなかった。この弓は飴色の綺麗な色だった。巻きの値段は一か所650円とあるが、色付けは別料金だ。

 


(本当の色)

矢羽根は元の完全な状態のまま残っていることは少ない。大体が欠落している。矢の矢羽根は稽古用のものでも使いにより痛むので補修するのは自然である。

(元は白鳥の羽根だっただろう)

矢羽根の補修は射ることはないと言う条件で依頼するのが良い。矢の竹自体が古いので射ることに耐えないことを考えれば、展示用で良い。矢羽根は鳥の種類で値段が異なる。材料は大体が外国製だ。


(新調した矢羽根、回転の角度は付いてない)

鏃の補修は難しい。すでに素人が磨いてしまったものは形が壊れている。専門の研ぎ師が研いだそうだ。中茎(なかご)の朽ちたものは、長い尖った鉄棒を溶接して修復するより手はない。
日本の鏃は矢が竹なので、内部に中茎が入る方式で、それに紙が巻いてあったものは朽ちていることが多い。

矢の本体の先端、日本の矢は竹の空洞を利用して茎の長い鏃を入れる。矢が命中し、引き抜くと鏃は体内に残った。

このくらいの錆の鏃はいじらないほうが良いが、長いものが朽ちていたので、伸ばした。
曲がりは矢に入れる際、抜け落ちないように付いている。
弓、矢羽根、鏃、全てが完全な状態で残っているものは少ない。貴重な文化財ではあるが。以上