6 、「陣笠」と「とんきょ帽」
雑兵の「被り物」として、戦国期より「陣笠」、幕末の西洋軍流の影響を受けた所謂「とんきょ帽」の2種がある。
(高級な平陣笠や、幕末の韮山帽など多種にわたるが。)
具足、鎧を着用した身分ある侍、雑兵の中間に位置した者が着用する
「お貸し具足」には簡単な兜が付いている場合と陣笠が付いている場合がある。
1、 陣笠の種類
使用目的によりさまざまな材質で製作されたが、一般的に戦闘目的には鉄か皮革製、作業目的、荷駄、警護などには皮革製、紙の重ね、
などと言われるように分類できる。表面の仕上げはほとんどが漆でありいずれも主人である家の所有だから、その家の家紋、合印(所属を示す簡単な印)が正面に漆で入れられている。
鉄製と皮革製の割合では大体半々である。皮革製も戦闘に使用されただろう。とにかく現在でも頑丈で耐久性がある。
戦闘用の鉄製陣笠においても鉄板を6-16と幾枚か重ねて縦に数個の鋲止めし、その直径は30㎝強が普通である。高さは低く、20-25㎝くらいと平たいのが特徴だ。鉄板の厚さは1mmくらいと薄く、刀、槍、その他打撃武器にはあまり効果はない。現存するものに戦国期のものは少ないので、江戸期にこのように軽いものになったのかもしれない。
無論、直撃する鉄砲玉には無力である。
材質的に鉄以外では皮革を乾かし漆掛けした品は意外に頑丈であり、
刀、槍、打撃武器に対しては鉄より強いと考えられる。錆びず、軽量で価格的にもこの材質が最も高価になったと考えられる。
いずれも内側は綿入れ(藁のものもある)の棒状クッションで、紐を4点で支え、Uの字に下し、下には顎下で、止め戻して、横に顎にまわした結びとする。
直径がやや大きい32-6㎝くらいのものが存在するが、それらは
「鉄砲隊の陣笠」と言われる。広いつばで火縄を守るためだ。
火縄と火皿を濡らさないために首をかしげ、陣笠で雨水からかばった。
一方、非戦闘用、雨風直射日光をしのぐ荷駄などの識別に使われた陣笠は鉄以外の材質で多いのは和紙を重ね合わせ漆で仕上げた品もあり、意匠があり、面白い。
2、「とんきょ」帽
19世紀、幕末に西洋流軍学の影響により、欧州の歩兵、騎兵の
背の高い帽子で、陣笠とは別に区別される被り物であろう。
材質的には陣笠と同じく、鉄、皮革である。
寸法的は下部直径30㎝、高さ25㎝が普通である。
出来は陣笠より高級で、雑兵が使用したものとは考え難い。とんきょ帽の印は家紋が主で、仕上げも高級であり、はたして
身分の高い者の装具品とも考えられる。
洋式軍装に兜はないから、このようなものを用意した。
とんきょ帽と陣笠、その他被り物の図録を作りたく別途約100様の
画像を取り込みたい。
以下掲載の予定である。
6、「陣笠」と「とんきょ帽」 | |||
本項> | 6-1 鉄製の陣笠 | ||
6-2 皮革製の陣笠 | |||
6-3 とんきょ帽 | |||
6-4 その他の被り物(かぶりもの) |
(この項以上)