6-1、鉄製の陣笠

陣笠の価値は、まず出来と保存状態、そしてデザインだ。
出来は鉄板の数と鋲、そして漆の塗りで決まる。保存状態は内部のクッションと
頭の両側にくる棒紐が残っているかだ。そしてデザインは様々であり、とても
ユニークな面白いものもある。

6-1 鉄製の陣笠

鉄製陣笠は「鉄砲隊陣笠」と言われ、鉄砲隊が主に使用したと言われている。下部の直径が30㎝から38㎝くらいまで差がある。37-8㎝もある被り物はかなり大きく、邪魔になる恐れもあるが、以前、先生たちより火縄を保護するために大きく作ったと聞いた。欧州の火縄銃士はマントを装着しているが、火縄を雨風から守るために前に垂らしたと言うが同じ考え方だろう。では果たして野山で火縄自体、もしくは火皿をこのように守れたか?大きな陣笠を被り構えてみると
丁度、頬付けの日本の火縄銃の場合は陣笠の中に入るから、一応の合理性はあったのだろう。鉄で作ったのは、鉄砲玉の飛んでくる最前線での気休めであろうと推察するが。陣笠全体に言えることだが、家紋、合印が正面、正面と後ろ、たまに3面に入れられている。言うまでもなく敵味方の識別のためだ。
① 鉄板8枚、前後に合印、表にも布を張りアルファベットのWとUを組み合わせたような合印が入れられている。寸法は直径32㎝高さ19㎝。

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綿を木綿でくるんだ頭の両側にくる棒紐が残っている。

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② 〇に桔梗紋、明らかに家紋の上手なものだ。鉄片は12枚を各々6個の鋲で止めてある。
寸法は直径35㎝、高さ20㎝で塗りも良い。残念ながら内部の装具が欠落しているが
それを止めてあった鋲、4個の大きさと頑丈さが見てとれる。

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③合印が目立つように

8枚の鉄片を組み立ててある。漆も厚い。裏は布を張り漆がかけてある。
合印とはこのようなものが多い。遠眼にも識別が付く。寸法は直径32㎝、高さ
20㎝。合印は見ての通り円の中に枡が。後ろ面に環が取り付けてあり、そこにも見分けのつく色の布などを結び付けた。内部の棒紐も健在である。

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④日の丸は昔からのもの

鉄片は8枚を合わせてあり、上手のものだ。しかもこの合印は簡単ながら分かり易くのちに国旗に使われた意味が理解できよう。 内部の棒紐は失われているが、金具は頑丈だ。

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一般的にはこのように錆が深くなると、薄い鉄板で、保存が悪いと持たない。
寸法は直径33㎝、高さ⒛㎝。

 

⑥◇ますの合印

頑丈な作りである。10枚の鉄片を縦6個の鋲で頑丈に止めてある。
合印もいかにも陣笠だ。表は漆をたっぷりと塗り、鉄板の継ぎ目が
見えないほどだ。寸法は直径36cm、高さ20㎝で大型である。
棒紐が欠落しているが、紐掛けの環の立派な作りだ。

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てっぺんも10個鋲で重ねてある。非常に大きいので鉄砲隊用であろう。

 

⑥無地

後で印を入れるために無地のものもあった。寸法は更に大きくて
平たい。直径37㎝、高さ16㎝。8枚の鉄板で構成され漆も厚く、
上手である。内部の4つの環も健全だが、内部の棒紐はない。

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内部の塗りも厚い。

⑦無地

⑥と同じように無地にしておき、後に合戦前に合印を入れるものであったかも
しれない。10枚の鉄片で構成され、天井にも鋲が打ってある頑丈な品。
寸法は直径35㎝と十分に大きく、高さは18cm。縁が痛んでいる。
直径15mmほどの棒紐(中は綿)と顎紐は残っている。中心のクッションもあったのだろう。シンプルだが良いデザインだ。

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(つづく)

6、「陣笠」と「とんきょ帽」
本項> 6-1 鉄製の陣笠
6-2 皮革製の陣笠
6-3 とんきょ帽
6-4 その他の被り物(かぶりもの)