1 、刀の種類
時代による分類
古刀(ことう)
時代的には慶長以前であり、1600年を境としそれ以前のものを言う。但し戦国期末古刀は鉄砲が出現してからのものであり、それ以前とは明らかに戦闘方法が異なったので、量的にも多く存在し別な評価がされるべきものであろう。例えば鉄砲出現後の刀は補強された甲冑などに対抗するために身幅が広く、重ねの厚いものになり、逆に世の中が安定してくると、反りが浅い先が細いものになったと言う。
新刀(しんとう)
幕末を除く江戸時代全期を通じ作刀されたものを言い、平和なこの時代を象徴する華美で鑑賞的な刀が多い。武家諸法度で寸法其の他が規定されていたので、例えば短刀などの作は少ない。
新新刀(しんしんとう)
幕末の短い時期に製作された時代を反映した実践的な刀であり、武器としての機能性と復古調を特色としている。現代刀(げんだいとう)明治以降の作になるもので近代のものも含む。
長さによる分類
剣
反りのないもので両刃のものを言うが日本の古代のものは片刃で真っ直ぐである。
太刀(たち)
中世以前のもので刃を下にして身に付ける。反りが深く、長いものが多い。
刀
刃の長さが60cm以上のものを言い、刃を上にして腰帯に差す。打ち刀とも言う。両手で使用する。
脇差し
刃の長さが60cm以下、30cmまでのものを言う。武家諸法度では室内においては脇差しを帯びるものとしている。片手でも使用出来る。
日本刀剣の柄は布製の紐で巻かれていたものが多いが、この2例は、柄全体に漆が掛けてある。上は刃長45cm、古刀、無銘。柄は布巻きでその上に厚く赤漆が塗られている。下は刃長45cm、古刀、「月山」銘。柄は皮革製の紐を巻き、その上に黒漆が塗られている。 また鍔には小穴が2個あり、それらに紐を通し、手首に固定して保持した、と言われている肥後拵と呼ばれている。
短刀
短刀は30cm以下の短い刃で片手で使用出来た。古来、鎧武者同士の組み打ちでの重要な武器であったと言われている。かさねが厚く、鎬の無い平造りのものが多い。上は刃長25cm、「南紀重国」銘、新刀初期の作。下は「兼房」銘、古刀期の作。五三の桐紋で統一された現代拵に入っているが、大戦中は海軍の短剣であった。刃断面は三角に近く、厚い身と鋭い切っ先を持つ。
大小の例 其の一

大小の例 其の一
刀は刃長70cm、新刀期の「肥前忠吉」銘、刃紋は互の目。刀装具は竜の意匠で統一されている。脇差は刃長38cm、古刀、無銘、互の目。刀装具は唐獅子と牡丹。「おそらく造り」と呼ばれる形状の身を持つ。大小はそれらの刀装が揃いになっていたものが多いが、別な造りの大小を差していたことも多かった。
大小の例 其の二

大小の例 其の二
刀は刃長68cm、新刀初期、「光清」銘、刃紋は細直刃。反りの殆どない刀で、刀装具は竜の意匠で統一され、柄巻きは厚みのない紐を使い、幕末に流行した拵えと言われている。 脇差は、刃長40cm、古刀期、無銘。
製作地による分類
古くの日本は幾つかの文化圏に分かれており火縄銃も同じく、各地の鍛冶により微妙に異なる特徴の刀剣が製作されていた。
古刀の時代には、山城、大和、相模、美濃、備前(五ケ伝と言う)などが高名であり、新刀の時代には摂津、武蔵、加賀、肥前、薩 摩など各地も加わった。新新刀の時代にはその生産は全国規模になっている。古代より刀剣製作のなかった地方はないくらいであり、それぞれがその地方の鍛冶の特徴を維持しそれが日本の刀剣の一つの魅力となっている。
形状による分類
刀は同じように見えるがその形状で分類される。
反り
ほとんど真っ直ぐな刀は珍しく何らかの反りが付いている。反りは対象物を切断するために物理的に必要であり、製作は難しくなるが実用面とその形状で評価される。反りが手元にあるか、真ん中にあるか、先にあるか、また深さで分類する。
刃の付け方
古来多くの日本刀はしのぎ造りと呼ばれ、刀身の側面に線が入り刃を形成している。これに対し直刀はしのぎ線がなく平造りと呼ばれている。 その他しのぎ線が刃先に寄りしのぎ地がない切り刃造り、片方のみしのぎがある、片切り刃造りがある。
背中の部分
刀身の背の部分、みねの形が上に尖っているのをいおり棟と言う。角が落としてあるのを三つ棟、上が平らのを角棟、丸いのを丸棟と言う。
切っ先の例
大きな切っ先の刀は新新刀期の「南紀重国」銘。かさねが厚く実用的な刀。中直刃。小さな切っ先の刀は古刀期の、推定「三原」。細直刃。