9 、現在の大砲

すでに大砲の時代は終わった、ミサイル(誘導弾)の時代だとも言われる。
確かに大砲は155㎜榴弾砲など巨大、強力なものをのぞき大小の誘導弾が
これに替って来た。誘導弾はまずは設備が軽便であること、電子システムの発達で精度が良い、威力が大きいなどの理由だ。この傾向の例として護衛艦の装備を観ると、小型護衛艦は5種類ほどの武装を備えているが、砲はそのうちの一つでしかない。船首部分、75mmのセミオートで自動的に発射できる小型砲のみだ。砲弾は船内からの自動装填、照準はレーダーで従来の砲の概念とは異なる。
砲弾は一体型だ。他の武装は、小型巡行ミサイル、小型ミサイル、20㎜バルカン砲、短魚雷などだ。全てレーダー照準と誘導装置で照準する。

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陸上でも砲は戦車、戦闘機動車などの武装であり、あとは若干の自走砲類だ。
それらが155㎜榴弾砲だ。すでに19世紀なかば砲の役目は小銃の射程外から歩兵・騎兵を倒すと言う重火器としての優位性を艦艇から陸上までずっと保ってきたが、ここ一世代は誘導弾にその立場をとられている。砲においても照準はレーダーとコンピューターシステムを使用し、砲弾はエネルギーを最大に使用した破壊力のある、また遠距離射程を持つ優れた兵器だ。
現代の戦車、90式、10式の砲は滑腔砲で砲弾が回転し、砲身は耐久力が増加した。

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9-1 、英国・ドイツが開発した155㎜榴弾砲

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19世紀後半、英国・アームストロング、ドイツ・クルップは両国が欧州の
海軍国、陸軍国の代表的存在として砲の開発でも最先端の技術を保持していた。
(アメリカは南北戦争後、兵器に関しては後進を拝し、他の民用技術が芽生えようとしていた。エジソンやベル、ライト兄弟など)
日本は明治の各戦争においてこの両国から砲自体を輸入し、製造を依頼した。
時代は経て、
NATOが創立されて、英国とドイツにイタリアが加わり開発されたのが
「FH70155㎜榴弾砲」だ。1世紀近くの伝統が、ビッカース社、
ラインメタル社の共同開発で花開いた。

 

そして時代の宿命か、日本もこれを採用し、日本製鋼がライセンス生産した。小さなエンジンが付いていて、自ら少し移動できること、装填が楽なことがその特徴だ。全長10m,重量は10t近い。8名の兵員を要す。
射程は30㎞。155㎜榴弾は地上戦においては最大の威力に近い規模だ。
各国のうちでは日本が一番多く400門以上を保持している。どういう想定で使用するのか、戦車をはじめとする大規模な侵攻がなければ使用する機会は小さい。トラックで牽引され観閲式などのパレードには必ず出てくる。
次世代のものが構想されていると言うが。砲は正確な照準と計算が必要だ。
これは他の電子技術の発達と大きな関係がある。

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装填架の部分
一昨年の記念日の発射、空砲が異なるのかかなりの迫力があった。

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岩手駐屯地特科部隊のFH70 の運用訓練

すでにミサイルの時代と言われているが、このような大型砲を400門も展開しているには理由がある。コストパーと正確性だ。
先日(2014年5月)岩手駐屯地、雨のなかでの演習を見学し、その展開、運用のチームワーク、素早さに驚いた。
チームは砲とそれを牽引するトラック、指揮所、測定所、観測所などが一体となり通信が正確であること、そして兵站が保持されていることが緊要であろう。
指揮所が砲の出動を命ずると砲を設置する地帯を偵察車がぐるりとまわり安全を確認する。

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指揮所

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トラックに牽引された砲が一個中隊、3門入ってくる。

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牽引を離して砲を設置する。砲同士の間隔も正確だ。

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測定所から目標までの距離を報告してくる。
目標までの砲の角度をあるいは砲弾を計算する。砲は科学であり、計算だ。
3門が一斉発射するのを斉射と言う。

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端から次々を発射するのを連射と言う。

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砲撃が終わると、観測所からの報告が入る。
と言う手順を踏む。

砲腔の様子

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隊員が示しているところが閉鎖機器であり、意外に小型だ。

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【この項以上】

 

9-2、99式自走榴弾砲

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巨大なものだ。コンテナほどの箱型の砲台と、垂れているような長い砲身
独特だが、米国アリゾナ州の軍需部における試射でとてつもない良い成績をあげたそうだ。日本純国産だ。台車部分は三菱重工、砲身は日本製鋼。

あまりにも変わった形なので、駐車するときこの自走砲に対面し、砲身のしたに自分の車を停めていた。

諸元

全長 全幅 全高 重量 武装 発動機 乗員
11.3m 3.2m 4.3m 40t 12.7mm×2 600HP 4名

普段、砲身は1mほど短く収納され、移動する。発射の際は伸び、さらに

砲身はたわんだ状態だ。発射する時に真っすぐになる。

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台車の後方に自動装填装置があり、砲弾、薬筒は当然このクラスの大型砲では
別々だが、それを自動的に装填する。発射速度は速い。命中精度は高い。
国産の世界一の火砲であると自負できるものだそうだ。

そんな凄い兵器とは知らず、失礼したが、100両は北海道に展開されている。

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9-3、護衛艦艦載砲

現在の艦艇は2世代前の艦艇に比較すると装備砲の大きさ、数に大きな差がある。

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右たかなみ型、左はつゆき型

現在、日本には55艦の汎用護衛艦が存在するが、ほとんどの艦艇は船首に一門の砲を備えているだけである。これらの砲はイタリア製、オート・メラーラ砲で、艦艇の大きさにより127㎜砲か、76㎜砲である。いずれも砲塔内は無人で操作され砲弾は一体型、円形弾倉を使用する。排莢は甲板上に散らばる。
たかなみ型(6000トンクラス)、イージス艦には127㎜、はつゆき型(4000トンクラス)には76㎜砲が装備されている。前の写真は珍しく両者が並んでいたもの。

はつゆき型の例

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76㎜砲

諸元

重量 口径 初速 発射速度 最大射程 装弾数
7トン 76㎜ 900m/秒 85/分 18000m 80発

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弾倉の様子

たかなみ型の例
76㎜砲に比較すると重量が重い。

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127㎜砲

諸元

重量 口径 初速 発射速度 最大射程 装弾数
37トン 127㎜ 45発 3km 66発

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