火縄銃



 5 、装具

装具

鉄砲を撃つには様々な装具が必要である。戦闘においては装具の他に、甲冑(身分の低いものは具足・陣笠)、刀剣。修練におい ては火消し衣装、胸当てなど。 火縄、火縄入れ、口薬入れ、火薬入れ、玉入れ、火打ち道具、分解道具、早合、胴乱、玉薬入れ、玉型、鍋・柄杓、予備のさく杖 などなど。どれか一つが欠けても射撃には不便をかこう。

火縄銃の装具

火縄

木綿、竹、木を紐状にしたものに硝石を染み込ませ、確実に緩慢に火が燃えるものを作る。一本の火縄は2mくらいの長さ で数時間保つ。火縄の先は赤くなり煙があまり立たないのが良い。但し湿気、雨には弱いのが火縄式の難点である。一度火を付け た火縄は確実に消火しないと危険である。

火縄入れ

金属製で胴火とも言う。燃えている火縄を柄から差込み、円筒の部分で保持する。帯に差していても火の危害がないよ うにの工夫。柄に開口部があり、そこで縄を送る。 (下の写真参照)

火打ち道具

火打ち道具

火打ち道具

携帯用に小型に作られたものは火縄銃射撃の必需品だった。皮製の袋にホクチと石が入り、袋の下部が鉄になってい るものが一般的であるが、何とフリントロックの機構のものもある。

口薬入れ

日本の火縄銃は火皿に乗せる発火用火薬と銃身内に入れる発射用火薬を その細かさで区別した。発火用のものは細かに擂り潰し、発火に遅れが出ないようにし、それらは小型の口薬入れに収納し腰にぶ ら提げた。手を放すと蓋が重みで下がり閉まるように工夫されているものが多い。 (写真下の小型のもの)

火薬入れ

火薬入れ

火薬入れ

早合への火薬の装填、もしくは早合を使用しない場合は火薬入れから直接銃に火薬を装填した。火薬入れの蓋が大体その銃1発分の火薬が測れるように作られているものが多い。様々な素材、容量、形状、品質のものが存在するが、腰に付ける携帯用のと設置型に大別出来る。また明らかに士分のもの(家紋などが入っている)と猟師のものは区別出来る。

早合

早合

早合

あらかじめ1発分の火薬と弾丸を竹、紙製の筒に装填しておきそれを銃口にあてがい、一挙に銃に装填出来る仕組みのもので、幾つかが紐に結ばれ、首に掛けて装備した。 短筒用には2本が紐に結ばれたものが見られる。

弾丸を作る道具

弾丸を作る道具

弾丸を作る道具

弾丸は鉛を溶かして、玉型に流し込み製作した。日本の火縄銃は様々な口径が存在するので玉型も多くあ る。大きな鍋に鉛を溶かし、厚めの柄杓でそれを掬った。 玉型は鉄製柄の先、頭部分内部が球形になっておりそこに溶けた鉛を流し込み、柄を開いて弾丸を取り出す。

玉と火薬などを運搬する箱

玉と火薬などを運搬する箱

玉と火薬などを運搬する箱

腰に付ける個人用胴乱は皮革、紙、薄い木、もしくはそれらの組み合わせで出来ている。表には家紋が対で入れられているものが多い。負い紐は火縄を兼用した。 団体用には内部が引き出しになっている縦長の木製の箱が用意されており、引き出しには早合、火縄、火薬、玉作りの道具などが収納された。

陣笠

鉄砲隊と言えば陣笠、陣笠と言えば鉄砲隊と言うくらい切っても切れない関係にある。薄い鉄板を張り合わせ、漆を塗り、家紋か合い印と入れてあるものが多い。

銃運搬用の箱、袋類

銃運搬用の箱、袋類

銃運搬用の箱、袋類

大きな銃は木箱に入れ従者が2名掛かりで運搬した。参勤交代の絵では鉄砲は細長い布、皮革もしくは紙製も存在しただろう、の袋に入れ肩に担がれて いる。大体は家紋が入れられていた。現存する実物は少ない。

胸当て

胸当て

胸当て

火消し装束の一つで着物の合わせから火の粉が入らないように当てた。厚い木綿、もしくは皮革製で、上部には雲型が、中央には家紋が大きく入れられている。これは同じく火の粉が飛び散る火縄銃射撃の必需品で、家紋は個人の所属を遠目にも明らかにするため大きい。

和製管打ち小銃と装具

和製管打ち小銃と装具

和製管打ち小銃と装具

19世紀中頃、火縄銃の形状をそのまま踏襲した、頬当て銃床管打ち銃が各地において製作された。この銃は上作の四匁筒で、桔梗紋の負い皮、胴乱、管入れが揃いになっている。

いずれも未使用の状態で、西洋のものを見様見真似で製作はしたが実戦には使用しなかったのであろう。

調練装具箱 (個人蔵)

的場(大名屋敷では下屋敷に設けられていた)に鉄砲と練習に必要なものを持ち調練に行くに、火薬、火縄、口薬、弾丸などを一つの箱に入れたもの。
風呂敷で包み従者などに持たせた。忘れ物がないようにするのが一つの目的。
欅(けやき)製。

幅178mm、高さ150mm、奥行き142mm、火薬入れ高さ125mm、
55mm四方。

写真1 写真2

本多家の火薬入れ、口薬入れ 野戦用 (個人蔵)

木製の本体に麻布を巻き、漆をかけて防水にしてある。口薬入れの「本」の字に○がないが、その理由はわからない。

火薬入れ直径140mm、口薬いれ直径80mm。

写真3

口薬入れ 鼈甲製 (個人蔵)

高さ80mm、幅60mm、透明な素材で、中の火薬が見える。

写真8 落とし蓋方式

口薬入れ 水牛角製 (個人蔵)

使い易い形状。高さ90mm、幅30mm、奥行き20mm

写真9 落とし蓋方式

早合 金色

木製に皮革張り、金漆がけ、全長100mm、直径20mm

写真10

玉薬箱 (個人蔵)

一人の兵士が身に付け行動できる弾薬数は30発が限度のようだ。従って、このような箱を用意し、大体300発分ぐらいの火薬、玉、火縄などを運ばせた。
「兵站」と言う考え方は火縄銃出現から発達した。
この箱は高さ450mm、幅370mm、奥行き120mmくらいの大きさで、火縄になる紐で担ぐか二つを合わせて棒を通し2名で運搬させた。それ以上は馬載した。内部は3-4段の引き出しになっており、奥行きから早合をそのまま入れる用にもなっていた。檜など軽いが丈夫な板で縁を鉄具で覆い、漆をかけ防水してある。反対側には合印や所属(藩名)が書いてある。

写 真11

六匁用早合 (個人蔵)

紐(火縄になる)に結びつけ、肩掛けした。(英語ではバンドリアと言う)
長さ120mm、直径20mm。三十匁用になると長さは130mmだが太さが30mmとなる。

写真12

二-三匁用早合 赤 (個人蔵)

長さ90mm、直径17mm。このくらいの大きさが一般的なものだっただろう。

写真13

陣笠 (個人蔵)

薄い鉄板、皮革、紙などで足軽用に使わせた被り物。防御能力はない。鉄砲隊は鉄板の陣笠が多く、しかも大きめにしたと言う。雨の際に火皿や口薬を守るためであった。描かれた印は家紋ではなくて、合印と呼ばれる所属を示すもの。

写真14