8- 8 、鉄帽
(九十式鉄帽偽装網を装着した状態)
日本軍が鉄帽を着用したのは遅かった。第一次大戦の欧州戦線ではすでに一般的になっていたが、1928年、中国済南で日本人居留民の殺りゃく事件、軍が出動した際が初めてだった。この時の初期型はあまり残ってなく収集物としては高額だ。1930年に「九十式」として制定したものが大部分だ。
素材にモリブデン鋼を使い、形の特徴としてはシンプルだが、上が線を描いている。
当時、米軍、英軍は皿型の薄い鉄板の鉄帽であったから日本軍は近代的であった。モリブデン鋼は弾丸があたると貫通するより壊れると言う形になる。いくらモリブデン鋼でも直撃弾は防げない。内部は皮革製で、牛革、豚革の三枚のヒレを組み合わせてある。
底の三枚を通す紐が深さを調整し、三枚のヒレは廻りの革帯で本体に4箇所固定されている。
正面には鉄の☆が、この☆がないものが多い。その理由は、アジアに残された
日本軍鉄帽を独立戦争などで、三八式歩兵銃ともに現地軍が使用した時に☆を取り去り、緑色などに塗り替えたからだ。元のカーキ色は焼きつけ塗装だった。ベトナムからも緑色の鉄帽がアメリカに多く入った。ベトコンが使っていたのだ。
2種類のサイズがある、「小」は縦27.5㎝x幅23㎝x高さ16㎝
「大」は縦28㎝x幅23.5㎝x高さ17㎝。アメリカで観た比率、大対小は5対1くらいであった。他の収集家は50個もっているがアメリカは大が多いと明言している。推測だが、制定し余裕のあった時期には大と小、2種類を生産したが、後には大しか生産しなかったと思われるのでこういう比率になったのではないか。下の画像には12個あり、右の2個が「小」サイズ
同じ九十式を海軍陸戦隊が使用したが、☆の替りに錨が付いている。内部が皮革の替りに帆布製である。もしくは皮革だったものが摩耗し帆布にした。
海軍は艦内使用の鉄帽、簡略な鉄板製でサイズは縦28㎝x幅26.5㎝x高さ14㎝、内部帆布製が存在し、ほとんどの艦艇を失い、60万人の陸上兵力が残った際にこれらを陸上兵力用鉄帽として使用した。
☆のない鉄帽は価値が劣るので中田商店が製造した☆を付けたものもある。
日本人がアメリカに持ち込んだのだ。実物と比較すると若干薄く、柄が短いようだ。柄は内装を固定するのにも使っている。
(レプリカの☆と錨)
戦時中の写真を見ると、鉄帽に限らず個人装具は塗りなおしてムロで焼きつける作業をしていた。これは明らかに塗り直しだが、日本の色ではない。
また、鉄帽には出営するときには、被いがついていた。素材が鉄なので、気温に影響される。詰め物をした厚い木綿製の被いで正面には☆が縫い付けてあった。
なかなか見つからないものだ。
現在、陸上自衛隊などで使用している鉄帽は、樹脂の軽いものが一般任務で使用され、戦闘では上に鉄帽を被せる。これはベトナム戦争の頃より米軍で使用された方式だ。樹脂のものも鉄のものも少し離れてみると区別はつかない。
(この項以上)