火縄銃



23、日本の火縄銃使用後手入れ

概説:火縄銃で標的射撃を行う人たちはすでに様々な方法でその手入れ、清掃を学んでいるであろうが、先日、新しく演武をやる方から手順や注意点を質問された。火縄銃が使用する黒色火薬にはコロシブ(腐食物質のこと)成分が多く含まれている。これは近代銃、多い少ないはあるが、無煙火薬も同じで、銃を使用したら速やかに手入れをすべしと言われる。一発発射しようが何発撃とうが同じである。
手入れが確りしていると、兵器は永遠にもつものである。(南部 麒次郎氏の言葉)近代銃でもぬかりなく確り手入れしたはずであるが、2-3日してもう一度
清掃用のパッチを通すとまた汚れている。湿気などで完全に汚れを落とすのはなかなか難しい作業である。狩猟などに行き、寒い外部から暖かい室内に銃を持ちこむと当然、水分が銃腔内、機関部に付着する。
道具を用意する。外した部品の入れ物を用意する。登録証を置くべきところに
置く。

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1、 清掃の必要性
ある大きな演武団体の安全顧問をしていた。この団体は2年に1度、1挺で10発以上発射する演武を実施するが、鉄砲は個人のものでなく、団体の所有であった。
そのために演武が終わると、鎧や旗指物など手際よく箱に詰める。鉄砲も同じくそのまま箱に詰め、鍵を掛け、また鍵のかかる収納庫に収めてしまう。
近いうちに手入れをするという方針で、宴会になる。事実、年に何回かは風通しを行う。
ところが鉄砲はそれでは完全でない。2年間も火薬を発射したまま置いておくと、すでに腐食が進行している。演武だから大きな影響が無いと言う意見もあるが、
一番の問題は、火皿と火孔のあたりである。銃腔内はガチャガチャになろうが
演武ではあまり大きな影響はない。火皿、火孔が腐食するとやっかいだ。
それで、この団体には射手が手分けして流れ作業で、使用した40挺もの鉄砲を手際よく清掃する方法を教えた。手際良くやっても2時間はかかった。
でも新入会員も含め、全員がチームワークで鉄砲を清掃することは団体にとっても非常に意義のあることだと感じた。また新入りの会員に銃の構造を知って貰う意義もあった。2年間のうちには油が乾いてしまうので、時々の手入れが必要だ。

 

2、 手入れに必要な道具

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日本の火縄銃は銃身を銃床から外し、さらに尾栓を外して、銃腔を通して清掃する。そのために銃身を外す木ハンマーと楔、尾栓を回すスパナ、銃身を挟む真鍮板、それに銃腔を通す、ロッド(実弾を発射するには必ず必要)、布きれなどが必要である。洗剤と軽い油も。真鍮製のロッドは必要不可欠なものである。
これは専門家に銃口径に合わせて製作してもらう必要があろうが、自分でも
出来る。
スパナのセットは射場や旅先での手入れに便利である。
銃身の銃尾を立てるときはゴムパッドを使う。

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外した、外れた部品の入れ物を用意する

 

3、 先ずは尾栓を付けたままポンプする
私は鉄砲を清掃するためのボロバケツを用意してある。10リッターのバケツに
3分の2ほど、ぬるま湯に洗剤入れる。軽く泡の立つ程度で良い。洗剤は粘り気のある台所洗剤が良いが、米国ではソルベント言う黒色火薬用、無煙火薬用の商品がありこれらは非常に良いが現在黒色火薬用を旅先で購入しても航空機荷物の関係で持ち帰れない。そこに銃尾を下にして、火蓋を開けて銃身を入れロッドにパッチを噛ませポンプする。水は火孔から出たり入ったりして主に火孔を綺麗にするのと、尾栓を開けやすくする。

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4、 尾栓を開ける
必ず真鍮板(これは万力を使う場合も)で銃身を保護する。大小二つのスパナで締め、両方を逆に回すと外れ易い。尾栓はブラシで綺麗に洗う。
この場合、銃身は上に尾栓は下に回す。無理をすると腰を痛める恐れがある。

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作業台と万力があると非常に便利である。

 

 

5、 銃腔を掃除する

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尾栓を外してから、再びロッドにパッチを噛ませ、パッチに洗剤を付けても良い、もう一度、バケツの水でポンプする。バケツの水は一層黒くなる。1挺ごとに水を替える必要はあろう。
どの鉄砲がどの程度汚れていたかが分かるからだ。火薬の量が多すぎると汚れも多い。
これはパッチを変えて何度も行う。

6、 ネジ山、火皿、火蓋、雨被いの清掃
どこかで貰った歯ブラシは捨ててはいけない。軍隊においても歯ブラシは銃掃除の重要な道具だ。埃や砂を落とす。自動銃では特に重要な道具だ。
火縄銃清掃でも、洗剤を付けて、まず雨被いのあたり、火蓋、火皿、尾栓、そして銃の後ろからブラシを突っ込んでネジ山を掃除する。
また真鍮ブラシやウール(金属磨き)は使えるが、歯磨きチューブは使わない方が良い。塩が含まれているから後で錆びる。
雨被いは外さないほうがよい。緩んでしまう。

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7、 火挟みの清掃
カラクリは成るべくなら外さないほうがよい。内部は汚れてない。油もあまり必要ではない。外すことでかえって狂ってしまい調整に苦労することがある。
銃をバケツの上にサカサマにして、歯ブラシで火挟みを丁寧に洗剤で洗う。火挟みはほとんどが真鍮製だが、汚れたままにしておくと崩れて、もろくなる恐れがある。

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8、 熱湯を用意して銃腔からそそぐ

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清掃の最後の段階は熱湯を使う。洗剤と汚れを落とし、しかも鉄部を乾かすことができるからだ。料理に使った鍋のお湯を出し、しばらくすると鍋がその熱で乾いてしまうことを見るだろう。それと同じ原理だ。銃腔内は乾かし難い。それで熱湯を使う。ドライヤーなどを使っても時間が掛るだけだ。
ヤカンで熱湯をそそぐが手にかからないように注意する。
火皿、火孔、火蓋、などにも熱湯をかける。

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9、 組み立てる
乾いた銃身を組み立てる。尾栓に重い油(グリースのようなもの)を塗布する必要はないと言って良いだろう。塗るなら蜜蝋だ。もう一度、乾いた歯ブラシで火皿はこする。また、パイプクリーナや歯間ブラシで孔の内部を十分に拭く。

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これが一番大切な作業

 

10、 軽い油で銃腔内を通す
スプレー式の軽い油をそそぎ、ロッドにパッチを噛ませ何回も拭く。ロッドはそのまま銃身に入れておき、時々、パッチに油が付いている限り、銃腔を拭く。

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11、 木部は拭く
木部は意外に汚れている。手が汚くなっているからだ。そのままにしておくと輝きがなくなる。ぬるま湯でしぼった雑巾で丁寧に拭く。
木部は磨きすぎると元の美しさが失われる。競技などにつかう鉄砲はその都度
水拭きするので生地が出てしまう。日本の火縄銃の木部は大体が透き漆仕上げなので、そこを注意する。

12、 重い油、ワックスなどで外部に
銃身、木部など外部はワックスなどを塗布する。真鍮部分に塗布しても良いだろう。真鍮部分を磨きあげる人もいるが、真鍮の色の変わった部分を磨き上げるのは大変な作業で、真鍮をある程度削ることになる。そのままで良いのではないか。ここで塗布する油、ワックス類は高価なものを使う。

13、 組み立てる 尾栓には油は使わない
油には目的により様々な種類がある。また価格により質にも。
昔の鉄砲には植物油を使った形跡があるものもある。日本軍では鯨油を使ったそうだ。

14、時々ロッドに噛ませたパッチで内部を拭く
これは毎日、行っても良い。気温の差、湿気で銃腔ないは汚れている。
大日本帝国陸軍が九九式小銃(1939年制定)の銃腔内をクロームメッキしたことで初めて解決された問題だ。古式銃には勿論メッキされてない。だから汚れは完全に取れない。

このように毎日、ロッドとパッチで拭くことで古式銃は永遠に維持できるだろう。
(この項以上)