火縄銃



27、火縄銃演武、実射の危険回避

image001はじめに)
火縄銃は一般の古銃と異なり、発射は「生火で黒色火薬に点火する」ことが
ひとつの危険な要素であろう。黒色火薬はこすっても、叩いても、発火はしない。火だけが発火させる。
射撃中、火縄と火薬は引き金を引いて火縄の先が口薬に接するまで、厳格な手順がありそれは今も昔も変わらない。「火蓋きれ」の言葉がそれを表している。

最近、全国各地で火縄銃演武が行われるようになり演武団体が増えた。
昔からの演武団体は火縄銃発射の手順と絶対にしてはいけないことを会員に
伝統的に教える仕組みがあり、十分ではないがそれなりの火縄銃整備も行われている。なお、玉を込めていても空砲でも危険であることは同じである。
(近代の軍用銃では空砲弾でも距離によっては人を死亡させる威力がある。)

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1、 事故の分類
① 火縄銃自体が火薬の爆発に耐えられなかった例
さすがに銃身が割れたと言う話は聞かないが、多いのは火皿が銃身からはずれて飛び、見物人に当たった。火皿には、ねじ込み、沸かし付け、切り込みにはめ込むなどの方式があるが、現在、ねじ込み式は使えないと考えて良い。ねじ山が弱くなっているのだ。外国製のレプリカ火縄銃は銃身に切り込みを入れ、後ろからスライドさせてありさらにねじ止めもしてある。
日本の火縄銃は一般的には沸かし付け(溶接)だが製作の際に少しでも隙間があると年月で外れやすくなっているのではないか。
② 詰めモノが飛んで人にあたった例
空砲では迫力がない。それで大体実射の倍以上の火薬を入れる。さらに詰め物をする。ティシューなどの柔らかいものは銃口からでると飛び散り醜い。(「戦国自衛隊1」撮影の際、実物の火縄銃を20挺ばかり一斉射撃したが、その時の詰め物が醜くて不自然で、結果NGとなった。)
堅い紙を入れるところもある。紙でも堅いものは火薬が多いことも相成りかなりの威力になる。人に当て怪我をさせたことが数年まえ北の伝統的演武団体であった。
③ 遅発、不発であわてて、暴発する例
実射でもこれが一番多い。引き金を引き、火縄が火皿の口薬に接触しているのに発火しない。近代銃と同じく10秒間はそのままの姿勢で待つ。それから台に置き火蓋を閉め、火縄を外す。火縄を外して、火蓋を閉める。どちらかだ。
火縄を外すとき暴発する恐れが一番多い。演武では「黒子」がいて、「不発」と
声を出して射手はそのままの姿勢で、「黒子」が手袋をした手で火縄を外すのが常套である。素手で外そうとして暴発すると、火薬の粒が肌に入り、刺青のようになる。
針でほじくるがその刺青は10年間は消えない。
私は以上のようなことの防止のために口薬の管理と、火縄を火挟みに装着する際に、先を潰して、吹いて、平らなまま火先の元に近いところを指で強く潰し火挟みに下から入れろと教えた。先を潰すと言うのは実射の場合は火縄を入れる缶の蓋を使った。演武の時は銃の飾りの金属を使った。不発原因は火縄先の火が火薬に十分な熱を伝えてないことだが、火だねは残っていると考えて良い。
何よりも暴発した際に、銃口の先が射撃する方向を維持していることが肝要だ。この例の事故が一番多い。
④ 自分の持火薬に着火した例
すでに故人の某大先輩が武道館の演武でやってしまった。大きな口薬入れに
火縄の火花が入って、顔の前で爆発した。但し、口薬入れは木製だから、ボアーンと言うような感じで大きく白煙が上がったとしか観客には見えなかった。
武道の修練を積んでいた彼はうろたえず観客に「終わります」と大声で一礼し戻ったが、顔は火傷で真っ赤になっていた。熟練者でもやるのだ。事故は。
しかしこの際は早合の火薬でなくてよかったとすべしだ。量が違う。
とても演武の一部と誤魔化せるものではない。生火の怖さに気をつける。
同時に口薬も演武や射撃の場合も柔らかい入れ物に必要な量しか入れない
ことが緊要だろう。
⑤ 発射後の火薬の残り粉に時間差をおいて着火した例
この例はスローカメラで撮った発射の瞬間、銃口から多量の火花が出ている。これが演武の醍醐味だとするのも良いが燃えていない、もしくは半分しか燃えなかった火薬の粒が空中を舞うと言う。南北戦争当時、野砲の砲列の前では突然空気が燃える現象があったそうだ。それと同じと考えて良い。
大口径火縄銃ほど多い。数年前関西で起こったこの事故は射手が銃を発射、立てた瞬間に手に持った火縄で着火したと考えられる。やはり大怪我をした。

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2、 事故対策
① 銃器検査と整備を頻繁にやること。持ち筒は所有者の管理であるが、
演武団体において演武前に、火皿、火挟み、引き金の具合、などは責任者を指定して行うべきであろう。実射では命中率の良さの問題から口径10㎜程度の
小口径銃を使う。火薬の装填にはじょうごを使うのが一般的だ。
しかし演武に於いては大体口径12ー13㎜の銃が立てて、火薬を装填する、また
発射のはえも良い。
② 詰めモノはしない方が良い。空砲でも一斉射撃、大口径射撃などを横
から見ていると空気の振動が観客の方向に流れていくのが見えるほどだ。
詰め物をすると圧力が掛り、一層音が良い。しかし詰めモノはどこかに飛んでいくのだ。
③ 火薬量は演武場所に合わせてほどほどにするが良い。城の広場のようなところと、街中では同じ火薬量でも効果は大違いだ。
④ 持火薬も使用するだけにする。
⑤ 「黒子」の重要性。ベテランで不発やその他の不都合、銃の不具合に対応できる人間が必要だ。
⑥ 日ごろから手順を繰り返す。

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対策まとめ)
演武団体はチームワークである。指導者を明確に決める。それと銃に精通した「黒子」が絶対に必要。
ある団体の安全役員をやったが、その団体は持筒ではなく、団体の筒と装具なのでいささか手入れが不十分であった。演武が終了してからの銃の整備こそ
チームワークが必要だ。銃を分解する。銃身を洗う。カラクリを確認する。
台にワックスをかけ手入れする。組み立てる。注意点は銃の分解の際、尾栓と銃身を間違わないことだ。

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私が今まで見聞きした火縄銃射撃(競技、演武とも)意外なことに熟達した
何年もやってきた人による例が多かった。
ベテランこそ肝に銘じるべきであろう。

また短筒は不発の際、覗きこんだり、あらぬ方向を向けてし易いので、注意の
上にも注意で、むやみにやらぬ方が良い。

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一度、大きな事故を起すと、自分たちだけでなく、全国の演武団体、個人におよぶだろう。
(この項以上)