火縄銃



32、年少者用火縄銃

はじめに)

以前、国際前装銃大会の「短筒」競技に千葉のO氏が細く、長い
銃で参加した。明らかに両手で射撃する銃であったが、軽量なので
片手でも射撃できた。「短筒競技」はピストル競技に準じて片手で
射撃する。
様々な国の人から「あれはどのような銃なのか?」と言われたが
「年少者」調練銃であろう、としか答えられなかった。
現代の軍用銃に関しても第二次世界大戦期には、日本、ドイツ、イタリアなど枢軸国のものが有名であった。米国は.22口径実銃を使用したと聞いている。
江戸期の年少者用武芸と言うのはどのようなものであっただろうか?
木刀、竹刀、刀、弓矢、具足など明らかに10歳くらいの男子を
対象にして実物は残っているが、火縄銃は馬上筒、短筒だと
異形な鉄砲に無理に分類しているが、寸法、形状、特に重量からみると明らかに年少者に使用させたと思われる鉄砲はみることがある。
以下はその例である。
現在はその時代のその種の銃砲は世界中、恐らく存在していないだろうと思われる。欧州や米国に18世紀ごろの年少者銃を見たことがないからだ。
大日本帝国においては「軍事教練」が実施されるようになってから
各種の教練銃が開発製造されたが、一部を除き実銃と同じ寸法であるが滑腔で、実弾でなく、空砲、狭窄弾を使用するものだった。
南部設計の三八式8分の7銃は幼年学校用教練銃であるが特許を研究した米国人によると、滑腔で、自転するスラッグ弾を使用するものだった。これも研究者のレポートを読まねば判明しない。

年少者用火縄銃)

中途半端な寸法、口径の火縄銃を「馬上筒」「短筒」と定義することは簡単だが、一匁筒(口径9㎜)の前装銃に馬上でどのように再装填したか、短筒としても指がどうしても引き金より先に行くものは本当に短筒か?など疑問は多い。
(何度か書いたが日本の火縄銃の引き金は台の真ん中にある)
筆者にはこの研究に関してひとつのアドバンティジがあった。
それはSちゃん(10歳身長152㎝)とKちゃん(8歳身長145㎝)の私の研究に理解ある孫たちの存在だ。
Sはやせ型でひょろひょろだが歴史少年、Kは競泳選手でわりにがっちりしているが、同年代に比べると小柄だ。

1.Sが構えた細筒

この火縄銃は細いだけでなく、短い。全長99cm、銃身長75.5cm
重量1900g、口径は一匁(9㎜)だ。堺製の上手なもので「一夢」の銀象嵌。一般的火縄銃の4分の3と言って良い。

Sが構えると丁度さまになる。(写真)恐らく元服前の少年用火縄銃と考えて良い。

ただしこの銃を装填させるのは彼の身長ではまだ無理がある。

2.Kが構えた「短筒」と考えていた火縄銃

この短筒は一匁筒で口径は9㎜だ。全長50.8cm、銃身長32.3cm、
重量1000g、一般の銃の3分の1と言って良い。
バランスよく絶対に当たる銃だが、私の小さい手で握っても
弾き指(人指)が引き金を超える。(写真)

恐らく、この姿で発射させれば実用になる銃であろう。
握りも以下のようになる。

恐らく、この姿で発射させれば実用になる銃であろう。
握りも以下のようになる。

3.その他の調練銃と思われる火縄銃

上手の紀州筒である。全長88.5cm、銃身長59.0cm、口径二匁(11.5㎜)、重量1900g、紀州方式在銘(写真下)
一般の3分の2と言って良い。
Sに構えさせるが重いと言う。Kは構えられない。

上は一匁筒で阿波スタイルだが、全長130.1㎝、銃身長100.4㎝
口径9㎜、重量3900gと重い厚い鉄砲だ。在銘

銃は自体を眺めていても、ましてや文書を解読しただけではその用途や実態を語ることは出来ない。
操作する、構える、出来れば発射する、それらの行為により初めて
「どうしてこのような形状の銃が生まれたのか、使用されたのか?」
が実態として判明する。

文書類では年少者を対象とした記述や図はほとんどみたことがない。
この図は髷の形状から若者であったと推測は出来るが。

年少者用装具の例)

口薬入れだ。ご存知のように小口径銃は火皿が小さく、口薬も少なくて済む。

左の一般的なものに比較すると4分の1ほどの寸法のものを時々みる。恐らく一匁用の口薬入れであろう。
左の一般用は80ⅹ70ⅹ35㎜、右の小型は60ⅹ50ⅹ15㎜の寸法である。亀甲、薄い角で作られた高級品も身分高い侍の調練用と考えて良い

玉鋳型

その他にも二本松藩で見つけた少年用の胴乱なども見たことがある。

ジュニア選手とコーチの関係)

江戸期に恐らく、身分の高い子弟に武芸を教授したものは優れた
侍であっただろう。そのような題材を司馬先生も書いてはないが、
それで感じたことがあった。
それは現在のことだが。
外国では一般的だが、オリンピック、世界大会などの選手は年少の頃より射撃練習をしている。
日本ライフル射撃協会でもジュニア選手強化策があり、過去からそのような過程を踏んできた人達、選手もコーチも、以前、
付き合いがあった。
客観的にみると強化チーム委員会はどんな競技でもコーチの選択に注力すべきだと考える。良い選手であったから上の覚えが良いからではない。人格と常識の質だ。
年少者はコーチの人格に影響される。
一時的に技量が伸びても「ズル」
を覚えた選手は人間として失格だ。残念ながらそのような例は複数みた。(以上)