20、ハワイ「太平洋航空博物館」の日本帝国海軍関連展示
はじめに)
平成31年1月末に防衛懇話会ハワイ米軍施設装備視察会に参加したおり、同会の手配のガイドにより見学した内容である。
ハワイ、フォード島の「太平洋航空博物館」は場所柄、日本帝国海軍の1941年12月7日のハワイ攻撃をテーマにしているので、当時の日本航空機に関連する展示が多い。また民間運営であるので展示内容はしばしば変化し、リピーターにも楽しめるところである。
行き方が複雑で直接、タクシーに乗り着けられない。
一度、アリゾナ記念館に入場(荷物などの制限がある)してシャトル
バスに乗り、戦艦ミズリーとこの航空博物館を回る。バスは30分おきに周航、どちらか見学することも可能だ。
展示と説明は対象が家族連れとしているようで、やや物足りない
と言う点はあるが、ガイドの説明を受けるとかなり詳しい。
幾つかの棟に分かれているが、棟の間にも屋外展示がある。
フォード島からみたマウイ島の山、日本機は右から入り、山脈の
両側に分かれ、左で集結して「奇襲に成功」と攻撃を開始した。
映画によく出る象徴的なタワーだが、実際は港湾管制用
この前に本館がある。
本棟の展示)
1、 帝国日本海軍攻撃図 これをイラスト化したものが展示されていた。
2 零戦二一型と「操縦士」
以前は「整備員」もいたが今はいない。
この零戦は二一型で中国戦線に投入され後にガダルカナルに進出した1機で、ハワイ攻撃には参加してないが、修復され代替発動機で飛行可能だそうだ。
2、 九九式艦上攻撃機の残骸
この博物館にはいわゆる残骸がそのまま展示されている機体が3-4種あるが、これらは貴重な展示であると考える。
これしか残存してないからだ。中島飛行機製。三菱も含め1400機が生産され800kg爆弾、各種爆弾か、改造九一式魚雷を搭載した。
乗員は3名で淵田少佐もこの機種に搭乗していた。
ハワイ攻撃では40発の魚雷を落とし、約6割が何らかの艦船に命中したそうだ。
800kg爆弾と九一式魚雷
真珠湾上空の九七式攻撃機、高高度からの爆撃機は損害なしだったが、低空で攻撃した雷撃機の被害は大きかった。
日本機は29機が未帰還であった。
3、 ニイハウ島不時着の西開地 重徳上飛曹機の残骸
これは貴重な資料であり、またハワイの日系人を巻き込んだ悲劇的な事件であった。帝国海軍操縦士が土人の酋長を拳銃で撃ち、石で殺されたとか、現地の労務者監督の原田 義男氏が猟銃自殺し、その妻が2年半間拘束されていたなどの説明がある。
だが、客観的な事実に関しては疑問の多い内容で、西開地上飛曹の
御霊もどこに眠っているやら。
これらは以前にはなかったもので、時代を感じさせる。
ジオラマは良く出来ている、先の赤土の道路に着陸したとのことだ。
不時着10日後に撮影された写真だが、発動機、20㎜機銃は
鹵獲されたと思われ、研究材料になっただろう。
4、 ガダルカナルのF4Fヘルキャットと鉄板の仮設滑走路
穴あきの薄めの鉄板を航空機の離陸、着陸地点に敷き詰める方式で
重機すら十分でなかった日本帝国海軍の裏をかいた。
本で読んでも理解が難しいことを簡単に現実的に展示していた。
5、 ガダルカナルで日本機に撃墜されたB-17の残骸
米国の篤志家の偉いところは現地でこの残骸を土地所有者から購入し持ち帰り、展示しているところだ。坂井 三郎著「大空のサムライ」
にB-17が沼地に不時着した様子があった。乗員は基地に帰還した。
東京空襲をしたB-25ミッチェル、ドーリットル少佐が指揮し空母から発進した1機もあったがこのB-17は太平洋戦争では語らねばならないものだ。
映画に使用された零戦のテキサン、T-6は日本中、どこにでも野ざらしになっているが、攻撃機能もあった米軍の練習機だ。
この機は映画「トラトラトラ」で零戦に改造され撮影のため飛び
回り、またテキサンに戻されたそうだ。零戦のままだったほうが
価値があったかもしれないが、テキサンの後退翼をよく見ると少し
前進させていた。
その他)
珍しいものでは、
ミグ15
そして各種、初期の大型ヘリコプターだ。
試乗用の機体の客運送のバスも、
太平洋航空博物館は古い格納庫を幾棟も保持しているので展示機以外にも多くの機材があるようだ。博物館の将来の姿を現している、「テーマ博物館」のひとつだろう。
ハワイ攻撃の映画)
昭和18年公開の「ハワイ・マレー沖海戦」から日米の物語をハワイ攻撃にとった様々な作品があるが、筆者の評価では「トラトラトラ」1970年公開が一番だ。
CGの無い時代だから、実機を改造して飛ばし撮影した。
このシーンの幾つかは数年後の「ミッドウエィ」にも使われていた。
空母を運行させそこから実際に発艦させるのだからCGと一緒にしては可哀そうだ。
2001年の「パールハーバー」を薦める人達も多いが物語が子供向で、
CG活用の多くのあり得ないシーンがある。
「トラトラトラ」は空母ヨークタウンを使い、B-17の実機を方脚で不時着させ、そしてT-6を零戦にしただけでなく、T-6とBT-16を合体させ九七式艦上攻撃機を飛ばした。
これらは大変な作業と撮影であったと高く評価したい。
ヨークタウン級空母は3艦竣工したが、2艦は日本帝国海軍により轟沈された。日本の空母、赤城か加賀として映画に使われた。(おわり)