8 、個人装具

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右の兵の腕に見えるのは時計ではなく、磁石だろう。九六式軽機関銃

歩兵の携行する武器兵器・その他装具品はおよそ計30㎏あった。効率的に体につけて携行する工夫はなされており、これは現在の世界の歩兵にも同じように見られる。食料などはせいぜい2-3日分しか携行できず兵站の伸びきった前線では日本帝国は燃料を使う自動車輸送が少なかったので、たちまち苦境に陥った。その他に将校や兵士が生活、戦闘に必要な小型の装具品があり、それらの実物はあまり多く残されていないのが現実だ。
以下、幾つかの当時の兵士が身に付けた、官給、私物の小物を紹介する。

 1- 1、15糎榴弾砲薬筒用弾薬箱

箱の外側には白書きであの「三八式・四年式榴弾砲 十五糎車載用 彈薬等(薬筒用)
四箇」と記されている。ほぼ立方形、44㎝、44㎝、高さ33㎝。重量は11㎏。約20㎜の太さの長い麻ロープの輪が運搬用の取手だ。内部は十字に4つに仕切ってあった。

 

 1-17 、陸軍八九式胴体機銃収容箱

 

陸軍八九式胴体機銃収容箱(陸軍機は現地で組み立てられることが多かったのでこのような立派な箱に機銃を収納して運搬し、保管した。

 1-16、帝国陸軍諸箱の特徴的な 錠前

丸い部分を鉄舌に通し上にあげて、錠を取り付けた。帆布被いの付け方

 1-15、航空機用機銃収納箱

帝国陸軍航空機は分解されて輸送されることが多かった。現地で組み立てるのだ。それで、機銃を入れる箱があった。「八九式固定機銃甲」銃箱。この固定機銃はビッカース機銃から
発展したもので、陸軍機、九七式戦闘機、一式戦闘機の胴体固定機銃で甲は右、乙は左であった。給弾装置の位置が異なる。木製、鉄枠、やや緑がかった塗装。
横120㎝、幅25.5㎝、高さ25㎝、重量20㎏、No10330
とある。こういう種類の箱は珍しい。

 

「八」の文字が消えかかっているが

 

 1-14、カノン砲弾薬箱

「十四年式十糎加農車載用弾薬箱 二箇」 大きな立派な箱だ。程度も良い。横54㎝、幅31㎝、高さ33㎝、重量14.5㎏。木製、鉄枠、ロープハンドル。典型的砲弾箱だ。砲は砲弾の輸送が大変であるという証明はこの箱を見ても理解できよう。ところが、「十四年式十糎加農」砲と言うのが存在しないのだ。日本のカノン砲7㎝から15㎝くらいで10㎝と言うのは七年式で、東京湾要塞に配備されたとある。その後のカノン砲は15㎝が主流だった。

 

 1-13、探照灯用電器部品箱

全金属製の小型な箱だ。横25㎝、幅18㎝、高さ10㎝、重量200g。長さ10㎝ほどの取手で手提げする。従って探照灯に付属していたのでなく、持ち歩いたものだ。
「継電器豫備品箱」633と記され銘板が付いている。
「製作昭和十七年二月富士電機製造株式会社 探照燈番号630170京」
ヒューズが入っていたのであろうが、まずは探照燈が63000個以上もあったことに驚いた。
北九州では中国から飛来したB-29をしつこく捉え、屠竜の餌食にした成功例はこの箱が
装備されていたところではいかほどだったか。

 

 1-12、冠スパナ入れ

大きく「冠スパナ」と上に書かれている緑がかった小さめの箱である。冠スパナを使用したのは発動機を整備、修理するためだから、機甲部隊か、航空隊のものであっただろう。
横36㎝、幅21㎝、高さ10㎝、重量2kg。鉄は使ってなく、木材のみの組み合わせで、褐色に塗られている。内部は道具の頭を固定したのであろう、小穴が30あまり開いており、横の長さ6㎝位の鉄製の柄で運搬する。作業のあと、整備兵が一つ一つの道具を点検し収納した苦労がしのばれる。

内部

 1-11、小銃整備用品箱

蓋を開けると、内側に「装填品銃工具の表」が張りつけてある。工具の種類と備品数で、その内容から単に小銃を整備、修理する工具だけでなく、照準を修正する工具が含まれている。恐らく大隊単位の装備であっただろう。蓋は箱に掛る方式で、横63㎝、幅19㎝、
高さ15㎝、重量3.5㎏である。内部は58㎝、13㎝、11㎝。内部の装備品は一切なかった。
「携行銃工具箱」と書かれ、内部には「昭十六 谷」の刻印。野戦に携行し現場で小銃を
修正するために専門の兵士が携行したのであろう。

 

 1-10 、車載機銃属品箱

全金属製で九七式中戦車搭載チェコ機銃九七式「重」機関銃用7.7㎜用の属品箱だ。戦車に載せるので木は柄・支え台以外使ってない。「車重属匣」No19303と書かれた鉄板製だ。錆がひどいが、昔、らんるに出ていたもので、幾つか手に入れ一番よいものをリビー教授にクリスマスに贈った。横42㎝、幅13㎝、高さ12㎝、2・5㎏で内部の台に、予備の発條(バネ)とたしかロッドも入ったように記憶している。また興味深いことに十一年式軽機の金属製属品匣(清掃用具が全て入る)が収まった。