あまりにも多くの文化財が「銃」と言うだけ破棄される現状

地方で役所の文化財課が旧家の調査をしていた。
以前は乱暴にも旧家は解体屋が売れそうなものは持ち去り、そうでないものは
燃やしてしまった。ようやくここに来て、良心的な自治体は文化財課に家そのもの、家にあるもの、家財や文書の調査を行わせる。江戸期から続いた旧家は歴史の宝庫だからだ。理解ある所有者から寄贈を受けた民具や家具は資料館などに展示され、その地方の歴史を語る。すばらしいことだ。
だが、時々「銃器」が出てくる。

自衛隊武器学校にも「三八式小銃」のようなものがでましたが、と連絡があった。電話で文化財課の女性係員と話す。まず、全長やその他の特徴を聞くが
明らかに軍用小銃ではないし、猟銃の類でもない。
「刻印があるはずですが?」と聞き、ありあわせのハンドクリームを塗り、カッターナイフで軽くこすってもらう、「ありました、ありました」と言うことで、
写真を送ってもらい、なんであるかを教えてください、ということになった。
空気銃だ。この手もものは沢山みたが大体、古くは100年近くたっており、パッキングが機能しなくなっており使用はできない。

しかし、これはその旧家が相当な裕福な家であった証拠のひとつで、国産の同じ機能(例えばのちの兵林館などのもの)の10倍くらいの価格はしたであろう。

英国ジャガー社のハンエンエルモブランドの空気銃で、現在でも同じブランドで高級ライフル銃を製造している。高級品だ。

まず台木が良い。
銃口など頑丈、丁寧に製作してある。

仕組みは凝っている。中折れなどでなく、ポンプアクションで、下の握り台を
後方にずらすことで空気をいれる。
弾丸は正確な口径は分からないが、おそらく4.5㎜であろう丸玉を銃口から前装填する方式だ。

昔、冬に家の中で遊ぶために厚紙などを撃った。12-3歳適応のものだ。
今もそうだが、米国北部など気温の低いところでは地下室の一部のコンクリートを開けたり、バックストップを作り、10mほどの距離で.22口径拳銃などで練習する。室内で銃を撃つことをギャラリープラクティスという。この発見された空気銃はBBガンと言い玩具の範疇に入る。
所管の警察署にこんなものが出ましたと言うと、「任意」提出になる。
それはスクラップにされることを意味している。(警察署は銃をひとつあげたという成績に残る)

本当にそれで良いのであろうか?

恐らく、その旧家は明治時代から欧米富裕層まがいの文化を取り入れた生活を目標としていたのではないか。ピアノ、家具、洋画などなど。この銃はすでに無可動になっており(もし稼働しても完全無可動にするにはばねを切るだけなどで簡単に行える)

町の文化財課はこの町がどのように発展してきたか、その中でどんな家にどんなものがあり、それは何を意味したか、つまり文化を研究していると思われる。
先にも書いたが、一つの研究で意義のあることだ。銃もひとつのジャンルだ。

別な市では博物館が旧家からでた以下のようなものを管理している。
文化財で町の歴史を語る展示物としてとしてだ。

図1
下の2種類の管打ち拳銃は形式から19世紀半ば
治安の不安定な時期、「護身用」として用意されたものであろう。

そんな意味を、玩具の銃を任意に取り上げスクラップにするのが果たして文化か? 野蛮ではないか?と一銃砲史研究家としては考えるしだいである。
(この項以上)