よく観察すると、ばねの進化が近代銃を生んだ
(書評「ばねの基礎」「ばねのおはなし」)
はじめに)
近代銃の定義は「モーゼルタイプ(19世紀後半)ボルトアクション銃と言われている。「金属薬莢を弾倉に装填しボルトを操作したライフル銃」で、軍用銃が主体だが同じ形式の銃剣を使用しない民間銃も生産された。
日本では「三十年式歩兵銃、騎兵銃」がそれに当たり、明治三十年(1896)制定。日露戦争を想定し開発され小石川小銃製作所で、戦争中は一日1000挺、合計60万挺がアリサカと呼ばれ生産された。各国も、ドイツはモーゼル、アメリカはスプリングフィールド、英国はエンフィールド、世界のいたるところで同じころ生産された。
ボルト(円筒)の中には「コイルスプリング」が入り、ボルトを引くことで中の「コイルスプリング」が圧縮されボルトを倒すことで撃発状態になり、引き金を引くと、スプリングが解除され撃針が雷管を撃つ、と言う手順だ。
1、ばねの基本を書いた本「ばねの基礎」と「ばねのおはなし」
大体内容は同じだが、ここに「銃砲進化」のヒントがあった。
火縄銃、火打石銃、外ハンマー式各種銃は強い板ばねを使用していた。
板ばねは耐久性に劣るのと、ロックをひとつにして構成するのが難しい。
火打ち式銃の例では3個の強力な板ばねを鉄板に装着する必要があった。勿論故障の可能性も大きかった。
2、ばねには主に2種類ある。
本から知るに、人間が使用したばねは大きく分類し、板ばねとコイルばねの2種類である。日本の火縄銃のコイルスプリング(井上流ではするめと呼んだ、するめを火にかけるとくるくる回るからだ)しかし原則は板ばねである。
「ばねのお話し」より
3、本には2種類のばねの変遷の歴史は明らかに書いてない
しかし日本の銃器の歴史をみると、村田式十三年式、十八年式の小銃はボルトを使うが板ばね方式である。三角形のボルトの中に松葉型のばねがはいっている。
一方、村田二十二年式(1886)は特殊な円筒であるが、コイルばねを使用している。
ボルトヘッドと言う前部が外れる。この理由は良く分からないがコイルばねの分解、装着を楽にするためではないか。だから実用的コイルばねは19世紀の末期に出現し、実用化されたものと考えられる。欧米の産業革命の結果、良質な鋼とその加工が可能になったからであろう。時代的に合致する。
4、機関銃
機関銃の出現にはコイルばねが必要であった。コイルばね出現と同じころから
マキシム、ホチキスにより近代的な機関銃が開発された。
機関銃には反動利用方式、ガス圧利用方式が存在するが、いずれにせよ発射によりばねを巻いたロッドで円筒をもとにもどす必要がある。これは機構上、コイルばねでないと実現しない。
コイルばね
火縄銃のヘアピン型のメインスプリングや他の形式の真鍮製コイルスプリング、分類では板ばね加工してある。特にコイルスプリングを巻いた高級なロックだ。この板ばねはどのように製造したのであろうか?
現在、さまざまな近代的工作機械はあるが、なかなか難しいものだそうだ。
参考文献:小玉 正雄著 「ばねのおはなし」 日本規格協会
渡辺 彬・武田 定彦共著 「ばねの基礎―改定版 パワー社
(この項以上)