寺田 近雄著「日本全国保有兵器ガイド」と自衛隊博物館構想
寺田氏は我々、帝国日本軍関係装備品を研究する人々にとっては
バイブル的な「大日本帝国陸海軍軍装と装備」をかって著し編集された研究者である。この本は彼が日本全国、北から南まで帝国日本軍兵器・装備のあるところを回り、自分で写真も撮り編集したB5版220ページ白黒のガイドブックである。発刊は文春ネスコ、ISBN4-89036-1928 、価格は不明。1990年から月刊「丸」に書かれた記事を平成15年、もう10年になるが、それらの記事をまとめた。
内容は全国、公的、私的の博物館、資料館、史料館を網羅したもので、地区別に関東、北海道、東北、甲信越、中部、近畿、山陰、山陽、四国、九州沖縄となっている。
番号で分類されてないが、恐らく600の拠点が紹介されており、そのうち6割が自衛隊関係である。寺田氏は自衛隊に予算がつくようになり、各駐屯地に資料館ができ担当者が置かれるようになったとしているが、確かに私が見学した限りにおいてもそうだ。
東北方面隊の神町駐屯地にあった小銃数挺は今、岩手駐屯地の資料館にまとめられている。面白いことに大山元帥の遺品は富士学校と
岩手駐屯地に多くある。なんでも元帥当番兵が元帥遺族より形見分けされたものが彼の故郷、岩手に保存されており岩手駐屯地に寄贈されたそうだ。私は武器学校小火器館顧問として同館の武器兵器の整理、無可動化、展示を10年間ばかり手伝ってきた。三十年式小銃はそこにはない。ところが非公開の世田谷衛生学校にはある。
九二式重機関銃は武器学校のものが完全で程度が良い。わざわざNHK
大阪から取材に来た。関西の資料で探したが撮影に耐えるものはなかったそうだ。靖国神社遊就館はこれでもかこれでもかと埋蔵品を
展示して見るに堪えない。学芸員さんも武器兵器の専門ではない。
零戦52型レプリカの背後に大変貴重な20mm機銃ドラム弾倉が付き置いてある。しかしこの零戦には銃身の長い「改」が正しい。
武器学校には「改」が2挺ある。1挺を取り換えれば、両方に良いのだが。その交渉のルートすらない。
だからまだ帝国日本軍の小火器、航空機、その他はまだ国家的に整理されてないと言える。
話は変わるが系統的・総合的な「軍事博物館・資料館」的な展示のない国は私が様々な国々を訪れた経験では日本国だけである。
左翼勢力などの抵抗はあろうが、年間2000万人もの外国人が我が国を訪れる今日、やはり古代よりの日本の武器兵器を系統的に正しい説明をつけて展示する博物館の建設が必要であろうと考える。
武家文化の説明、元寇、戊辰戦争、明治維新と富国強兵、そして
その一部が「自衛隊博物館」であり、自衛隊のさまざまな装具品を
分かりやすく技術的科学的に説明するところで良いと考える。
自衛隊博物館においては銃身を潰したり、機関部を溶接したりの
無可動化は必要ないと考える。きちんとした管理を行い、少なく
とも自衛隊員は武器兵器の機構が理解できる、ことが必要であろう。
武器兵器だけでなく、防災装具の展示も面白い。
今から始めても10年間はかかるプロジェクトだ。だれかが、何とか
すべき重要な課題だ。
(以上)
(以上)