学校訪問 「陸上自衛隊高等工科学校」

―自分を磨く場所があるー

はじめに)
兵器の技術、機能や運営は日々に進化しており、それを扱う自衛官は、各部門の技術に特化した優秀な人間でなければならない。一方、兵員としての戦闘技術や能力も兼ね備えてないとの両面から、若年層教育は戦前から各種の「少年学校」として組織化された。戦後は世論(多くは左翼思想)への傾向も考えなければならなかった。残念ながら陸、海、空にこのような一般の高等学校(15-17歳)に値する生徒を育成する学校は各一校ずつになった。
陸上自衛隊には三浦半島の駿河湾沿いに位置する「高等工科学校」がそれである。
生徒の親御さんが自分の子供を訪れる際に、毎度、規律、態度、言葉の変化に驚くそうだ。少年たちの一種の成長と見てよい。我々が訪れ、一緒の食堂で食事をするさま、行進して教室にいくさま、教室でのさま、屋外教育でのさま、それぞれに一般の高校とは異なる自衛隊員らしさが自から身についているのが分かる。

それで港区防衛懇話会の一行は6月の梅雨前の天気の良いある日、自分を磨く場所に集う若者たちに会いに出かけた。

1、 学校の経緯と概要

昭和38年(1963)4年生の通信教育学校として開始された。その後、さまざまな変遷を経て平成2年に3年制の通信教育制度が開始され、「高等工科学校」となりはれて62周年を迎えた。「科学精神」を技術に適応、技術的技能を習得させる学校として独特の存在感を示している。約9万平方の広大な敷地を広々と使い、生徒たちは多角的かつ高度な教育を受けている。
(学校は陸上、海上、航空の3駐屯地が分けている敷地の大部分を占めている)
高等工科学校校章

image001

生徒の身分は特別職国家公務員(自衛官)であり、卒業後は陸士長となる。
教育内容は一般教育と専門教育に分類され、専門教育では電子工学などの特別教育に重点が置かれている。
一年生346、二年生313、三年生311名、計970名の陣容で、現在までの終了者は18,000名。教育は一般の自衛隊教育とは少し内容が違う、また高校生、つまり3年早く始める独特の制度である。入試は15倍の倍率と言う。
入学式

2、 教育内容

一般教育では家庭科などにはじまり自衛官として必要な必然的内容が1年間行われる。料理、その他家庭科は重要な科目だ。これは意外だが生徒は気を抜かず熱心に学んでいた。繭から糸を取り出す工程を真面目な顔でやっていた。
筆者の経験でも外国で単身であった期間、中学で習った家庭科授業の内容はとても役に立った。我が団員から「野戦で必要だからねー」と言う言葉が出たが
野戦では携行食だ。

image002
授業内容のもうひとつの特色は「防衛基礎学」である。我々の訪問中もグランドに迷彩服で小銃をもち基本的な戦闘教育の基礎を実施していた。
その他は普通の高等学校で行う各種の授業がある。画像、手前は体躯である。
また英語教科には特に力を入れている。数学、国語、社会、物理、化学などは
「一般教育」と言う。

image003
さらに電子工学的、IT教育は重要な内容である。
パソコン教育は各方面に配属されても電子機器の扱い、プログラミング、重要であり彼らが期待されていることは言うまでもない。

野外では体躯、その向こうでは自衛隊訓練が行われていた。自衛隊ではどこに配属されようが戦闘訓練は必な要素だ。

image004

(私はこの学校で上手く勉強していくには仲間との協調性だと感じた)

3、 高校過程における教育の重要さと規律習得

だらだらした我々が恥ずかしい。様々な年齢、職業の東京都港区に関連のある
人たちの自衛隊理解者の集まりで、どちらかと言えば老人が多い。それに対して生徒は若い、
食事の様をみていても若者オーラが伝わってくる。
この学校は「技術的な識能を有し、知徳体を兼ね備えた進展性ある陸上自衛官としてふさわしい人材を育成する」と言う理念のもと生徒は特別国家公務員となり、自衛隊員の身分となる。卒業すれば一番若い陸曹となる。

image005食堂の様子

水曜日のメニューはカレーである。カレーは2種類用意され、普通のルーカレーとキーマカレー(ドライ)で、なかなか一流の味であった。
生徒は学年に応じ、規律正しく入り、食べていた。私は半分にしてもらったが。

image006

image007
キーマと普通カレーの選択ができる
彼らのスケジュールには時間はない。午後1時前にはクラスごとに列を組み、行進しながら教室に向かう。その姿を見るだけでも心強い。

image008

自衛官教育は難しい。兵器の発展により高い専門知識が必要だ。
しかし、自衛官は、戦闘ができねばならぬ。それに重要なことは人間として
普遍的でかつ高い教養を維持することが必要だ。

陸上自衛隊だけでも30ちかい学校があると言う。

自衛官としての成長には教育は欠かせないものだが、「高等工科学校」のように
はじめから自衛隊の全体像を教え、自然に自衛官にする運営はいつの時代、どこの国でも必要かつ重要な要素であろう。

image009

(この項以上)