「自らの国家意識を持つ」と言う提言

はじめに)

私は陸上自衛隊武器学校幹部コースの学生に対し毎年、2時間の講話を行っている。パワーポイントやDVDを使い、毎年の内容は大体、以下のようなものだ。
兵器は19世紀欧米で急激な発展をとげ、大戦争においての犠牲はそれまでと比較にならぬ規模となった。大砲の発達、ライフル小銃、そして20世紀にかけては機関銃の発達が大きな要素であり、その背景は18世紀末から欧米で進行した
産業革命と帝国主義だ。

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日本は微妙なところにいた。19世紀初頭、欧米列強のさまざまな挑発を受けたが、艱難辛苦の果て1868年、明治維新を遂行し立憲君主国として政治、経済、社会の近代化を図り、かろうじて先進国クラブに滑り込んだ。もしそれが少しでも遅れたら、今の日本はなかったであろう。
明治政府のテーゼ「殖産興業」は産業革命と近代化であり、「富国強兵」は帝国主義(欧米とは異なるが)を意味していた。

image003明治の砲兵

だが現在、日本人はほとんど、江戸期末期から明治、大正、昭和と言う近代の歴史に疎い。なぜなら半世紀以上にわたり、日教組が歴史を正しく教えなかったからだ。間違った内容や無知により教師たちは江戸中期くらいまでの歴史に10カ月間を掛ける。日本の中高校では、正月休みが終わり、約1か月間で、近世から近代への変革を題字だけで教わると、ある教育者から聞いた。本当だろう。
それにメディアだ。「シバリョウタロウ」という作家とNHK大河ドラマが日本史を国民に誤解させた。

1、 武器学校にふさわしい講話の内容

近世から近代にかけての武器兵器の発達と、戦争での効果、世界史にあたえた事実をまとめて、日本史をからめ具体的、客観的に説明してきた。
以上のような意味もあり、このような内容は武器学校生徒にはふさわしいテーマであり、自分が実際に近世から近代の武器兵器を研究しそれらを操作した経験を確信を持ってやるが、毎年のならいとなりこの講話は8年間続けている。
私が米国南北戦争を研究し米国の各地の戦場やゆかりの地を回り、紹介を受けた地元の研究者と交流し積み上げた知識と経験は他の人には真似できるものでないと自負している。

image004南北戦争臼砲を発射する筆者

2、講話の進行

自己紹介に始まり、日本の戦乱と平和の大きなうねり、日本兵器史概略(ここには元寇のことを入れ特に「高句麗」(今の北朝鮮の歴史的危険性も述べる)、日本の海防と世界の戦乱(クリミア、米国南北戦争が主なテーマだ)、文久三年(1863)を覚えておけ、19世紀初頭までの日本の武器兵器特に大砲の遅れ、
産業革命の意義、明治維新の意義、日本近代化の背景などだ。

3、今年は日本帝国を学べ(日本帝国にではない)を強調した

帝国陸海軍のこと(1870-1945)を「旧軍」と言う人がいるが、この言葉は間違いだ。定義されてない。もし旧軍が存在したなら、自衛隊は「新軍」なのか?そんなことを言う歴史家はいない。
日本帝国陸海軍の特徴は大体以下のようになろう。
イ、 帝国陸海軍は各々別な組織であり、天皇が統帥した。兵器の互換性や統合性はあまり考えていなかった。
ロ、 帝国陸海軍期間は制定兵器や出来事の年号は漢数字を使うべきだ。(すでに戦後のもので同じ年号がある)
ハ、 日の丸、君が代、旭日旗の由来を知る。君が代は独唱できるが当たり前。

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ニ、 朝鮮、台湾は日本による「統治」であり、欧米的植民地支配ではなかった。
ホ、 各々の戦争の具体的、客観的事実は自分で勉強する。
などだ。

4、「国家意識を認識」する

今年はそれに各自が「国家意識」に基づき歴史、特に日本が近世から近代にかけてどのような努力をしてきて現在にあるかを知れという点を強調した。
日本帝国は立憲君主国で憲法も議会もあり、人口は70年間で3500万人から7000万人と倍に増加した。(統治地域は含まず)

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これは武器学校の生徒だけでなく、日本国民全員に言えることだ。
しかしすでに日本の近世から近代、現代史を正しく認識し教えられる人は数多くはいない。空白ができてしまったことは事実であろう。
それで今年はこのことを強く述べた。
また戦争の事実は他人や他国が言うことを信じるのではなく、自分で事実を知り評価をする、と言うことを強調した。例えばマレー沖海戦の意義。

image007プリンス・オブ・ウエールズ轟沈

話は変わるが、再来年、ロシアワールドカップ、日本は出場できないと思う。最終予選を通過できないからだ。それは日本選手たちがかってのサッカー後進国から一時は上位のランクにまで入った先人の努力を忘れ、また自分が日本人であるという認識が薄いと思われるからだ。(勿論、ナショナルチームだから全員が日本人だ)なぜそのように言うかとの理由は簡単なことだが、試合前、チーム全員が大きな口を開け国歌、君が代斉唱をしないからだ。
(この項以上)