現在なかなか見つからない2冊の学術書

日本学士院・日本学術振興会と日本古武道振興会・東京教育大学体育史研究室と言う二つの学術研究グループが各々、昭和35年、41年、1960年代の前半ごろに発刊した書籍だ。図書館でも古書店でも目にしないところをみると印刷部数が少なかったのだろう。しかし両方とも当時の一流の研究家の筆によるものであり、図面、写真等も多く、古文書から直接得ずとも詳細なる知識が得られる。

明治前日本造兵史 日本学士院編

日本学術振興会 昭和35年 B5版 479ページ

この編纂作業は皇紀二千五百年(昭和15年)に決定され、長与又郎氏、平賀譲氏が戦中に作業を開始したが、両氏とも死亡し、資料は戦禍に失われた。伊東忠太氏が中心となり昭和20年より再開、15年の月日を経て完成したものであった。戦前、戦中の思想だから基本にあるのは日本が外敵をしりぞけてきた、
日本人の勇気とその工夫である。砲と言う文字の定義、また地中に立てて鋳造する大砲の画が多くある。

箱入り
内容は、序論
本論 第一編 防御兵器
第一章 甲冑類
第二章 楯・竹束類
第二編 攻撃兵器
第一章 弓具・弩
第二章 刀剣
第三章 火器
第四章 雑(その他)
第三編 乗用具
第一章 馬具
第二章 輿・塵取・馬楼
第四編 雑
第一章 指揮具
第二章 合図用具
第三章 旗識類
第四章 陣営具
第五編 明治維新以後の兵器の概略

日本武道全集第四巻

日本古武道振興会・東京教育大学体育史研究室共編
新人物往来社 昭和41年 B5版 482ページ 砲術・水術・忍術史

約半分の量が砲術史である。 箱入り
内容は日本の砲術とその特色で、津田、稲富、自覚、田付、天山、荻野、森重、
井上、高島、などの概略と、中でも津田、稲富、自覚、南蛮、井上、天山、田付、荻野、森重、高島の各流派の派生と特色を記してある。主に伝書を現代文にしてある。高島流(ママ)ではモルチイルとボムベ、「モルチイルはボムベと名付けるところのうつろなる鉄玉を打ちに用す筒なり」西洋の兵器の定義を
最初にうたっている。資料を提供したのは有馬成甫、安齋實、所荘吉など、日本銃砲史学会の創立に関わった研究者たちであった。