「全国鉄砲鍛冶銘鑑」上下

小笠原 信夫、安田 修共著
およそ日本の火縄銃を研究するにそれを製造した鍛冶の名前を調べることがまず第一歩である。木台、カラクリ、銃身と鉄砲は3つの部分を組み合わせたものであり、銃身には約7割に鍛冶の銘が入っている。この慣習は日本の刀剣鍛冶の伝統であったこと、鉄砲銃身も刀剣鍛冶が鍛錬したことを意味しているのではないか。木台にも墨書きで台師と言われる職人の名前が書いてあることもあるがまれである。カラクリは仙台筒などに刻印が押されているものがあるが、これもまれである。この銘鑑は刀剣学芸員であった小笠原氏の調査をもとに、名古屋在日本銃砲史学会の安田 修先生が編集、印刷に至った。

研究者には誠に有り難い資料である。安田先生には数多くの研究発表がある。
一巻はアイウエオ順に鍛冶の名前が辞書化してあり、下部に○○住と地域が記してある。二巻は日本列島を北から地域別に南までその地に住んだ鍛冶を記してある。だから、在銘の銃に関してはどちらかをひくことにより、どこの誰兵かが判明する。現在、全国の登録火縄銃は5万挺とも言われている。各都道府県の登録を合計した数だ。この数は思いの他多い。また最北端の銘がある地域は仙台である。さて、それより北の地域はどうだったのか、これも興味ある課題だ。2巻は一つの箱入りで、文字も大きく読みやすい。イタリアの研究家ラウロ君もこれを求めて帰った。まずは資料、そして文字と地域を勉強するらしい。