「鉄砲を手放さなかった百姓たち」 刀狩りから幕末まで

武井浩一著、朝日新聞出版刊、2010・6,241ページ
泰平の世の百姓は武士よりも多くの鉄砲をもっていた!と表紙にある。
学術書であり、先日の中西崇会員の「小田原の村鉄砲」と同じ様な題材である。しかし、中西氏は鉄砲を自分で持ち、撃つという基盤で研究しているが、著者は鉄砲や狩猟、射撃にはあまり興味のない方であろう。全体に具体性に欠けている。構成は、
はじめに 鉄砲を手にした百姓 武士よりも鉄砲をもっていた(数量か)
第1章  鉄砲改めの始まり 家康政権 1651-1680
第2章  生類憐みのかげに
第3章  復活した鷹場とともに
第4章  暗躍するアウトロー
第5章  上知令と合わせて
終章 鉄砲を選んだ百姓
主に関東地方の様子を研究したものだが、農民の鉄砲はでは、どこから来たのか、誰が製造したのか、どう管理され、運用されたか、の事実関係は弱い。目的も有害鳥獣駆除だけだったのか、専門の猟師による狩猟産業があったのか、それらのテーマもあいまいだ。反体制として農民が鉄砲を保持していたという感じも受けるがそれは間違いだ。江戸期、現在の銃砲管理発端はあり、鉄砲は厳重に管理され、ひとつひとつには木製の鑑札(恐らく世界初だろう)付けられ、銃猟禁止地域も設定され高札が立てられていた。ましてやアウトローが鉄砲を手に犯罪の例はどのくらいあったのだろう?着眼点の良い研究ではあるが。