薩英戦争 荻原延壽著

薩英戦争 荻原延壽著 朝日文庫 遠い崖 アーネスト・サトウ日記抄
全14巻のうち第2巻より

幕末、日本開国に訪日した外国人、特に英国の4サー・オールコック「大君の都」とサトウは当時の日本の情勢、諸外国の思惑、意外な展開、それらを知る歴史的な資料として実に公平なものであると思う。サトウの「遠い崖」はそれだけが翻訳されていた。この本は、「遠い崖」に他の資料、外交文書、日本側の資料を加え、あたかも未完に終わった、大仏次郎の「天皇の世紀」を彷彿とさせるドキュメンタリーではあるが物語性のある、興味深い内容である。
第2巻には、生麦事件のあと、幕府の了解を得て鹿児島湾に出撃した英国艦隊と薩摩藩との戦闘、下関戦争の様子が描かれている。
特に鹿児島湾防備と英国艦隊の新兵器を描いて、英国が歴史上、初めてアジアで勝利を得ることの出来なかった戦い、歴史の曲がり角に詳しい。
鹿児島湾の砲台、青銅砲、英国艦隊の後装ライフル、アームストロング砲。
鹿児島の街を焼き払った行為に対しての英国内のジャーナリストの非難。
特にどういう砲台からどのような砲がどんな架台に載り何発発射されたか、
我々の研究課題になるものはまだ多く残されていると感じた。