久保田正志著「日本の軍事革命」

錦正社刊 B5版
ハードカバー268ページ
3400円

著者はご自分で、歴史学者でない、としているが、経歴は歴史研究自体にはあまり関係ないのではないか。歴史は現象を観察する角度の問題であると言われているが。まさしく、良い角度で見ている。中世から近世への日本の政治、社会に大きな影響を与えた、武器兵器、鉄砲と大砲の火器の効果を多角的に捉え、鉄砲が歴史の変化の鍵であったと結論づけた。ジェフリー・パーカーの「軍事革命」(この日本語訳本は失敗作であったが)それを日本に置き換えた。日本の刀槍戦闘から、鉄砲が城の構造を変えた、つまり支配の方法論に至るまで、制度や、兵站などの具体的な事例をあげて説明している。しかし若干の疑問がないわけではない。鉄砲、大砲の定義をこの本はどう捉えているのか。果たして日本には大砲文明はあったのか?欧州の傭兵制に似たものは中世において日本にも存在したではないか?朝鮮や中国の資料は正確、明確なものであったか。などだ。いずれにせよ、火器の発達で、日本の歴史は比較的早く、近世を迎えた。