軍艦「甲鉄」始末
中村彰彦著
新人物文庫刊2010年、762円
各種評には小説と言うジャンルで扱われているが、ドキュメンタリーである。著者は直木賞作家なので早とちりしたのかもしれない。幕府が苦労して海軍を創設した。しかしそれが形になった時、皮肉にも体制は崩壊、明治維新となった。「甲鉄」は奇妙な形の船だ。アメリカ南北戦争は艦艇を発達させ、潜水艦なども現れた。この船は木造ながら、全体に厚い鉄の装甲がなされているというのが特徴だ。南部連邦がフランスに発注、ボルドーで建造された。しかし南部連邦が崩壊しつつあり、北欧に売られ、それをまた北軍が
勝利したアメリカが購入、日本に売却したものだ。価格は20万ドルと言うが恐らく倍くらいになったのではないか。もうひとつの興味ある点は、日本の数学者、小野友五郎が幕府海軍方に登用され、この船の購入にアメリカに行ったことであった。小野は咸臨丸の使節団に加わっており、その後千代田型と言う小型船を設計したことで有名だ。
甲鉄は1358トン、全長59mの鉄張りの堂々たる軍艦で、300ポンド砲、70ポンド砲各一、
軽砲4門の武装、乗員135名。そして甲鉄、小野は、回天と戦い、そのまま明治政府海軍に引き継がれ日本近代軍の一翼を担って行く。
甲鉄、ウィキペデアより