火縄銃銃身は自然に曲がり、ねじれる

先日の銃砲史学会3月例会で早稲田大学中江教授の指導のもと修士の学生さんが発表した
銃身の「応力」の問題、これは気になった。物理の問題だ。

(真っすぐに見えても曲がったり、ねじれていることがある)

「火縄銃など日本の手作りの銃身は年月が経つと自然に曲がるものがあると言われてきた。」
原因は分からない。置き方が悪い。何か重いものが上に載っていたなどではないかと。
当然、木部が曲がったり、ねじれたりしたものもある。
火縄銃銃身は鍛冶職人が鉄を塊から叩いて伸ばし、板にしながら、丸めていく。そしてつなぎ目は沸かし付け(溶接のように)で筒を作り、徐々に長くしていく。


発表スライドの表紙

材料分析をするとまず、鉄の質量は均一でない。これは意図的に元の部分、銃口部分を強く作るのと、叩きの多いところ、少ないところがあるからだ。筒のつなぎ目も真っすぐな線でない。単位面積当たりの質量が異なるのは、ちがう材料で製作したと同じで、筒が座標軸に対して平均してないと言うことだ。だが筒にして完成した段階では真っすぐにしてある。物理力の応力(ストレス)テンソルをある程度コントロールしたからだろう。しかし年月が経つと、応力は、曲がりねじれに作用してくる。そして銃身には曲がってしまうものがあるのだろう。もしねじれたら、まず照準器が合わなくなるだろう。命中しない。


(銃尾の部分の分析、内部の詰まり具合から鉄の質が分かる)

実験では銃身を縦に切った。各々に掛る応力からもう一度合わせても隙間ができるほどだった。興味深い実験、研究であった。
以上