海上自衛隊護衛艦見学記

艦船は独立した組織であり、戦闘となればその艦の人員、装備、その他備蓄品全ての一個体であり、それをもって行動、活動しなければならない。他からの供給は期待できないのだ。一つ村落、街のような性格のもので、市長である艦長のもと、総員が各々の専門的な役割を全力でこなす、このチームワーク、効率が重要である。

日本の海上自衛隊にはいつも驚くのだが、『大日本帝国海軍』の伝統をそのまま受け継いでいる現象が非常に多い。占領軍が良く許した。陸上自衛隊の様相と比べるとあまりにも違うのだ。その代表例に韓国がサッカー応援にも使わせない、軍艦旗だ。軍艦マーチも演奏する。

ひとつ意地の悪い質問をした。「今まで訓練以外で(総員戦闘配置)を行ったことがあるのですか?」と。「お答えできないそうだ。」しかし艦内の状況はとても組織的、効率的かつ緊張感があり、また武装も想像していたものとは大きく異なる性格の装備品であった。総員戦闘配置の場合は直接戦闘装具を扱わない艦員も決められた装具の部署に行きその操作に従事する。
当日、横須賀地方隊に行くと、対岸には2艦の潜水艦、本部前の岸壁には、イージス1艦、護衛艦2艦、その他曳航艦などの小型艦艇が数艦、係留され整備中であった。海自の艦艇の名前は天候、山、島、湖などから付けられひらがな表示である。なかなか覚え難い。これも帝国海軍のままである。

イージスの威容

艦艇は今年行われ平成24年度自衛隊観艦式で多くの艦艇が出動するが、どの艦艇も乗員には広い、大きいというスペースはない。内部は極めて複雑で、艦艇が主、人間は従であるから、通路は狭い、階段は急である。しかし1時間も経つと慣れてしまうが、航海に出るとまた別な環境だ。
発動機に関しては30年ほど前からジーゼルからガスタービンを使うようになり、古い装備品は両方を混ぜてあるが、新しいものは全部ガスタービンである。
機関室は発電機3基が管理されており、1電力、2発動機、3生活用機械管制
である。航空機も艦艇も止まっている時の電源が重要だ。
見学した、護衛艦は古い機材で昭和56年から28年間使われてきた。外洋演習、練習艦隊、世界一周などしてきた。ソマリア沖海賊対策にも出動した。
3000屯、全長130m、速度30ノット(55㎞)、200名が定則数だが現在の乗員は160名、うち60名が戦闘員である。ヘリコプターを後部に一機搭載している。
武装はソナー、主砲76㎜砲、ハープーンミサイル、シースパローミサイル、短魚雷、20㎜6連バルカン機銃(3000発/分)などが何機か配置されているが、目立たない。小型の護衛艦である。

 

ヘリ甲板と各納庫

ヘリは後部の中央部に格納庫があり、台車で後部甲板に引き出される。回転翼は折りたたんである。発進は左横に出る。航空機は速度を得るため艦船の進行方向に出なければならないからだ。右の低い位置に管制室がある。
シースパローミサイルは4個の部屋がある箱に搭載された小型艦対空で、
直径20㎝、長さ360㎝、射程は25㎞くらいのものだ。左右にある。


シースパロー

ハープーンミサイルは大型で対艦艇用、丸い筒4個に入っている。射程は同じく25kmくらい。
76㎜砲はなかなか面白い兵器だ。砲塔の中には誰もいないようだ。セミオートで次々と砲弾を発射する。空薬莢が甲板に散らばる。砲弾は自動的に艦内から出てくるようだ。砲身が焼けつくまでどのくらい発射できるのであろうか。
30発くらいは大丈夫そうだ。射程は長いものではないだろうが10km以上はあろう。弾幕を張ると言う考え方のようだ。


主砲

20㎜バルカン機銃も他の兵器と同じくレーダー照準だ。上の白い被い、高さ2mはあろうがレーダーで、弾薬はメタルリンクで下から出てくる。当然、平時のメタルリンクは空に見えるが下には実弾が繋がっているのではないか。
この艦はソマリア海賊対策に行ったので、バルカン機銃の下には、恐らく12.7㎜機銃のものであろう、防盾(ぼうじゅん)付きの架台が左右にあった。
最初に入ったのは乗員厨房と食堂で、2人の隊員が卵をむいていた。

ちょう房

30-40人が一時に食事できる広さでこの部分が非戦闘エリアとしては一番広い。
続いて機関室。これは昔の艦艇のように水面下にあるのではなく艦の中央部に位置していた。艦橋は意外に広い。しかし10名近くに人間が入るとどうか。
右の赤い椅子は鑑長。左の椅子は司令官だそうだ。艦長の席、一番見晴らしが良い。ヘリコプターの発進や着艦はモニターで観るのだろう。
艦橋にはラッパが置いてある。まだ電子的なコミュケーション手段が断たれたときのことを考えて、ラッパ、笛、旗などの装具もそのままである。

艦橋左

同艦はまもなく退役となるだろう。
日本にはイージス艦を含め52艦の護衛艦が存在するが、この時勢を考えると、
イージス艦などの探知能力、戦闘能力の高い艦艇は無論、護衛艦自体、ハリネズミ化してしかも数を倍にするくらいの計画が必要だと感じた。

艦長席からの眺め

私たちが車で帰途につく際に、艦隊隊員が桟橋で「帽ふれ」の挨拶をしていたのが印象的だった。「帽ふれ」も多くの人は知らないが帝国海軍の挨拶だ。


このロープはどう使うのか

聞くのを忘れた。以上