江戸期芝居に観る「火縄銃」
これは江戸期の錦絵(浮世絵、版画)の一枚である。
「武器画 鐡炮 國周画」とあり、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」の
「勘平」が猟師になり鉄砲を担いでいるシーンだ。
話が良く分からなかったが先日、歌舞伎を観に行き、先輩から話を聴いて
このキャラクターが理解できた。忠臣蔵は実際にあった仇討で庶民に人気があったが、基本的には幕府の体制を否定するものだから、人物の名前などは
変えてあり、この勘平が実在した人物かどうかは不確かだ。
勘平は身分が低い、鉄砲を扱う者で、浪人してから京都山崎の農家の娘と仲良くなり、そこで猟師をしている。芝居ではこの場を「山崎街道鉄砲渡しの場」と「二つ玉の場」になる。役柄、身分は低いが仇討に参加したいと熱望している男だった。
舞台では、実物の火縄銃に近い出来のものを役者は持っており、口薬入れ、早合、そして火縄が重要な物語を進行させる小道具だ。早合は黒い長い筒を2本、首に掛けていた。そして誤射もして猪と間違え人間を撃った。
誤射して死亡させたのが義父だと思い込んだが、実はそれは義父を殺した犯人だったのだが。義父の死んだ身体を戸板に載せ運んで来た三人の猟師仲間。狸の某、種子島造、ともう一人。一人が鉄砲3挺を担ぎ、二人が戸板を持ってくる。その足取りが猟師だ。なかなか良いシーンだ。
この芝居を見ていても、江戸期、武士階級以外に農民が鉄砲を持ち猟師をしていた有様が分かる。
(錦絵本人所有、シーンはカタログより)