北宇都宮駐屯地(飛行学校)
(はじめに)北宇都宮駐屯地は宇都宮駐屯地の北、車で15分ほどの距離でそれらの間は住宅地、ショッピングモールなどが連なっている。
地方都市の賑やかなところだが、車が無ければ生活は不便だろう。
午後、北宇都宮駐屯地に移動し、1概要、2装備品見学、3資料館見学を実施した。
1700mx45mの滑走路があり、主にこの学校は陸自の回転翼機数種の訓練と資格獲得を目的としている。
戦前、帝国海軍は「予科練」、帝国陸軍は「少年飛行兵学校」を造り、若者から航空機従事者(操縦士、機関士、通信士、整備士など)を養成した。
航空機操縦は成るべく若くして、始めるが良いとのことで、学歴は関係なく、小学卒からでも受験資格はあったそうだ。
陸軍の少年飛行学校は入間、熊谷、水戸に造られ、昭和15年秋、この宇都宮、大刀洗、そして大津、大分なども開設された。
従ってその伝統か、この地は現在、陸上自衛隊の選抜者(防大、一般大学卒以外、26歳以下)の回転翼操縦訓練を実施している。
1、 駐屯地の概要
① 新規回転翼訓練機の導入
旧型の機材、卵型のOH-6D
この練習機を使っていたが、機種が生産中止となり、また残る機体も耐用時間5000時間を超え、退役させる機材が増えてきたので、平成21年度より米国陸軍が使用しているTH-480Bと言う機材に変換しつつある。
すでに20機(うち10機がここにあり)が購入され、さらに10機が到着する。TH-480Bは米国エンストロム社製民用機を軍用練習機に転用した機材で
コスト効率が良い、米軍での実績がある、などの理由で採用された。
アリソン250ターボジェット420馬力を備えており、全長9.1m、全幅2.5mで、
元のブルーの塗装をそのまま使用している。民用機は5人乗り、軍用練習機は
4人乗りだ。
② 操縦士課程
陸曹航空操縦学生と呼ばれるパイロットは陸上自衛隊全回転翼操縦士の70%で、この地より巣立っている。陸自航空科は主に16機種の回転翼からなり、
多目的に使用され、地上攻撃や空中戦闘は限られている。
ちなみに日本の回転翼機操縦士の70%は自衛隊に属し、その70%は陸自で、陸自には日本の操縦士の半分が所属している計算だ。1400名。
前期操縦訓練では身体造りの「陸トレ」(トレイルランニング、水泳)、そして基礎英語、管制交信など勉強に多くの時間を割く。教官一名が2名の練習生に付き操縦訓練は一日1時間で、その他の時間は前記の勉強と陸トレだ。単独飛行は50時間くらいで行う。前期9カ月間に国家資格(事業用回転翼操縦免許)を取得する。だが民間の操縦士のように無線の免許は取らない。基本的に操縦士訓練には、構造工学、気象学、法規、航法の4科目がある。
この後、半分の要員は明野学校に行き、後期は各々16の機種の訓練を受け、またその機種の資格を取り一人前になる課程だ。試験に合格しなければ、元の配属に戻る。
着陸
2、 実用回転翼機
これは私の個人的な意見だが、陸、海、空に共通に使われているのが、所謂ブラックホークUH-60Jだ。ここでも格納庫、エプロンに10機は観た。特にエプロンのものは即に応じられる待機だったのではないか。
回転翼の任務は、偵察、観測、輸送、救難など多目的であり、先の東日本震災で最初の津波の撮影から行方不明者の捜索まで様々な任務をこなした。しかし
自衛隊の任務は、戦闘から逃れることはできない。そういう意味で攻撃ヘリと
空挺用ヘリの任務は消防や警察、民間のものとは明らかにことなる。
UH-60J
防御、航続距離、武装など。その点で言えば、日本の敵である、災害と本当の敵(有事)に対応できるのはブラックホークUH-60Jだ。UH-60Jは双発、4枚翼の中型機とは言え、全長20m、全幅5.4m、全高5.1mもある。翼は一つにまとめ後方に固定でき輸送可能。シコルスキー社の開発、全世界で2600機が飛んでいるが、日本でも110機。戦闘用には「ブラックホークダウン」にあったように一個分隊と重火器が一個搭載でき、ロケット、ガンポッドがあり、航続距離は1,300㎞。
これが戦闘ヘリだ。
3、 資料館
あまり大きな、また立派な建物ではないのが惜しい。
帝国陸軍少年飛行学校のゆかりの人々が寄贈してくれた帝国陸軍の操縦士関連のものが充実している。
飛行服、飛行帽、上着(ウィングマークが誇らしい)、ゴーグル、手袋などと珍しいパラシュートハーネス、全て程度が良い。
本来は一体で展示したら良いのだが・・・半長靴は見なかった。
飛行服もせっかくだから脚が折れていたり、寝かしては可哀そうだ。
戦後の固定翼観測機の計機パネル揃っていて良い
ジェットになる前のヘリの星型発動機
(おわりに)
陸上自衛隊の航空戦力として重要な回転翼機の操縦士の育成課程が良く理解できた。操縦士一名を育てるには億円の単位の費用が掛る。また退職した操縦士がその技量を社会に生かせないとこれもまた無駄だ。
今後の課題としては更なる効率的課程の追求、機種限定の航空証明への国交省との調整、予備役精度(すでにあるだろうが)の充実が必至と感じた。
(この項以上)