1- 6、陶器製手榴弾
2種類ある。一つは画像のようなソフトボール状のもの、もうひとつは手榴弾型のもの。どちらも高性能爆薬を入れ発火ヒューズで使用した、と言われ、文献が発行され、このテーマで学位を取得した研究者もいるので、大変、心苦しいがこれらは炸裂手榴弾ではない。(ポータルの論文集に「陶器製手榴弾への疑問」の題で書いたとおりだ)
その理由、
① 曳火信管は手榴弾本体が落ちて割れて外れたら着火しない。
② 高性能爆薬には起爆薬が必要である。
③ 口から爆薬を装填するに極めて効率が悪い。
④ 陶器は質量が軽く、鉄製のような初速が得られない。
⑤ 大体、人間が投擲出来ない。(手榴弾型の細長い小型のものは投げられるが火薬容量が少なすぎる。これは投擲訓練用の一種だったと推測する。)
九九式模擬手榴弾(手前)と比べるとあまりにも大きい。
結論から言うと、この陶器製の上薬が掛けてあるものは、化学兵器用の手投げ弾として開発されたものと推測される。内部にサリン、シアンなど液を入れ、
戦車などにタコつぼからぶつけるためにと、開発されたのではないか。
上薬は化学液が漏れないためで、液体ならば小さな口からも効率的に入る。
当時の戦車や戦闘車両は外気を吸気していたので、液体が気化し乗員に被害を与えるのが目的だ。投げる、ぶつけると言っても数mの距離だから、投擲者も生きては帰れない兵器だっただろう。しかし日本軍、化学兵器は最後まで使用しなかった。そして多量の容器だけが投棄された。化学兵器の後ろめたさからだと思う。戦後の物資のない時代、この入れ物でも油、醤油などに利用できた
はずだ。
ちなみに米軍のガス手榴弾と実際の手榴弾の比較は以下のようである。
両方とも訓練弾だ。左はガス弾、右は通常の炸裂弾で、丸いものがでるまで
使われていた。柄は手で握ったまま安全ピンを抜く、投擲する、柄がバネで
跳ね上がり空中で、「ピーンー」と言う独特の音がして、信管に着火する。内部装薬は下に開いた大きな穴から装填しねじとめしてある。出来も威力も
日本軍の九九式には敵わないと言うのが、アメリカの研究家の話だった。
日本はよほど資材不足に悩んでいたが、陶器で炸裂手榴弾は出来ない。
この項以上