陸上自衛隊第四師団研修
今回は防衛懇話会の研修で北部九州を守る福岡の第四師団を訪問した。
防衛懇話会は工業倶楽部にある防衛産業の団体であるが、HPもなく
世間一般には知られてない。会員は法人と個人。法人は防衛産業であるが個人の
資格はよくわからない。年に数回の防衛座談会と施設や駐屯地の研修、観閲式、
火器演習、音楽祭などイベントに参加する。
日本の安全保障を語る論文を数多く掲載する紙も発行している。これが電子化できたら良いのだが。
今回の研修、12月15日、時期的に参加者はいつもの30名規模から20名くらいになって、在会年数の関係か私が団長を申し付けられた。
昼前に到着した空港には幕僚長に出迎えていただき、私、団長、事務局長、防衛省担当がまず師団長にご挨拶に伺った。
師団長と挨拶で雑談するのも団長の役目で、その前の週に行った狩猟、射撃の
話をした。
それから昼食、
午後続いた研修は恐らく数百人の隊員を動員しての力の入ったもので、
特に、第四師団の国際医療援助活動の実働のありさま、核・化学・生物兵器
対策の様子、架橋、新機材展示など充実したものとなった。
1、 海外医療援助の準備訓練
2、 核・化・生物兵器対応訓練
3、 海外医療診療訓練
4、 架橋訓練
5、 新機材展示と体験搭乗
恐らくこれだけの徹底した大人数を動員する訓練の研修は初めての経験だと言う会員が多かった。
1、 海外医療援助の準備訓練
体育館に300品目1万点の資材を仕分け、重さのバランスを考え効率よくもれはないか点検しながら搭載する訓練。資材はすべて実物で記録と合わせながらチームで行う。
2、核・化学・生物兵器対応訓練
乗員輸送車に科学弾で攻撃された、という状況を想定して、車内の乗員の救助、車体の洗浄、
一連の流れを約30名の隊員が役目を決めて行う。全員が防疫装具を着用し、最後は隊員を
救急車が搬送すると言うもので、隊員相互の洗浄、車体の洗浄、汚染された防疫装具の始末、
少し距離をおいて救急車に搬送など、細かい部分を観察した。このような攻撃への対応の
鍵は作業の手順、スピードであると感じた。
3、海外医療診断訓練
災害などで医療救助を求めている某国に医療隊が1、で準備された装具を持ち派遣されたという想定。指揮所、受付、問診、外科、内科、治療、レントゲンなどの実際に使用する
機材を複雑に構成された天幕で行う。掲示は現地語であり、現地語の通訳役がいた。
まずは本部には10名以上の隊員が現状把握と指示、恐らく様々な通信器具が使われたのであろう。
町の診療所並みの使節と言っていたが、300種類もの装備を持ち込み行うのだから、並みたいていでない援助だ。また隊員は現地の防疫にも対処しなければならない。
4、架橋訓練
先の災害で(現地でも熊本地震)、仮設橋の架橋は重要な作業である。橋には柱なく、約60mの長さ、小型車がすれ違える幅を持った橋を速やかに掛ける。この作業はエンジニアリング(土木)隊の中でも極めて重要なもので、架橋の機材は運搬のため、分けて、しかも
折りたたんである。橋は強度を考え、柱がないので、太鼓型になろう。大きなクレーンが運搬車から釣り上げた、畳んだ機材を降ろす間に開いて、ガチャンとつないでいく作業は実際には高度な技術を要するだろう。長い間、冷たい鉄橋の上で待機してくれた隊員に感謝。
5、新機材(装備品)展示と体験搭乗
最近、数量装備された島しょう部攻撃に反撃する水陸両用車AAV7 および10式戦車など数両が展示され、詳しく説明された。戦車搭乗は74式で、そう広くない駐屯地の狭い道路を3回直角に曲がるコースだった。
防衛懇話会としても今回の一連の訓練視察にはもう少し大勢の会員に参加してもらいたかったであろうが、年末の繁忙期になった。
訓練を実施してくれた第四師団、師団長ならびに隊員諸君の日ごろの努力を実感した。
(この項以上)