4- 2、学校教練で教えた手榴弾投擲法
陸軍省編纂の「学校教練必携」
手榴弾発火に関して九九式以前のものは信管の被いが緩い。安全索を抜き
手を放すと被いは中のコイルバネの力で外れ、撃針を打つ個体も出てしまう。
これは安全設計で、安全索(ピン)を抜き取ってから、投擲を中止する場合を想定していた。戦場でピンを元に戻すのは危険だ。中身が出てしまえば後に信管を外し組み立てることが出来る。米軍手榴弾のように、ピンを抜いたら、握りがバネを兼ねている方式は投げるしかない。
同書においてこの点は明確に記してある。号令「発火準備」と掛ると、ピンを
抜く、信管の頭を下にして噴気口を左に向け、親指を錫板(銅で出来ているものがほとんどだが)左面に向ける。他の4本の指は右側より本体を確実に握る・・・
それから左手に持った小銃尾板に当てる姿勢をとる。――(略)――
投擲方法として、左右の足は目標に直線になり、図には一回小さく回して、二回目に身体全体を前に倒すように、頭上で放す・・・とある。
いずれ、手だけで投擲してもたいしたことはない。身体全体で投げるが原則だ。
だが、以前米海兵隊の訓練を見学していた際、模擬手榴弾だが、後方に落としてしまった者がいた。また、立ちあがり腕を回している間に敵の弾丸を受けると発火した手榴弾は味方の真ん中で破裂・・と言う危険性も含んでいる。
投擲法、柄付き手榴弾か?
手榴弾投擲の定義は「接近戦において爆裂により敵を殺傷、震壊させるために使用する」とある。
「沈着」「正確」の2点が必須であり、「敵に対しての投擲は自己にも危害あり」とある。
投擲法には、立ち投げ、膝投げ、伏せ投げの三通りをあげ、あらゆる場面を想定し投擲号令に従う。
立ち投げは30m、膝投げ・伏せ投げは20m、目標を中心に半径5m以内に落とすとある。
この教本によれば九七式手榴弾は信管を指で押さえて発火させると言うことが
明確である。
(この項以上)