4- 1、「手榴弾教育ノ参考」小版 86ページ 陸軍歩兵学校編 昭和14年
本書は各部署からの教育の要点を聴きとりまとめ、将校から下士官、下士官教官から兵に手榴弾投擲の「攻撃」と「防御」の要点をまとめた教本であり、科学的に書かれている。使用手榴弾は九七式、と柄付きの2種であり、曳火式の構造は簡単に説明してある。基本投擲距離は「30m」である。例えば九七式を現在我々が投げろと言われると20mが限度であり、標的に向かい30m投擲するには日ごろの投擲訓練が必要で、その安全で手軽な手段が「キャッチボール」であったのだろう。
投擲用教育資材としては、石灰を入れた陶器製模擬手榴弾が用意されており、石灰は模擬手榴弾の上部に開けられた幾つかの孔から煙のように噴き出た。
信管を使い石灰を吹き出し、さらに目標に命中した際に標的にマークを付ける。
標的は垂直に立てた。これは後の述べる学校教練用が水平地面と異なった。
30mの距離に高さ5mの布幕を立て、円径の真ん中5点(直径20㎝)から外に1点とある。攻撃型使用の例であり、立姿勢で、1点が合格点である。
30mと言う距離を考えるとこれでもなかなか難しい投擲だ。
その他、陣地、塹壕などからの投擲、伏せ姿勢からの投擲の実戦闘を想定した訓練が続く。
塹壕の造りも規定してある
教本には各国の手榴弾の概要説明、そして競技会実施要領なども含む。
競技会は錬度の低い競技から高いものまでを系列化しており、軍における
手榴弾投擲訓練のプロセスを示している。
恐らく、手榴弾投擲競技は連隊単位ではかなり大掛かりなイベントであっただろう。
(この項以上)